公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
神経幹細胞は、大脳新皮質を構築する大量の神経細胞・グリア細胞の全ての起源である。発生過程に沿って、神経幹細胞自身が指数関数的に数を増やす増殖期、神経細胞を産生する時期、胎生後期のオリゴデンドロサイト系譜細胞を産出する時期、次いで胎生後期から生後のアストロサイト産生期と、神経幹細胞の性質は大きく変化する。また、これらの期間中に神経幹細胞の細胞周期は著しく伸長し、成体脳においてほぼ細胞分裂が停止した状態へと移行する。神経幹細胞の分化能力や細胞周期の変化は、大脳新皮質の多様な神経細胞・グリア細胞の産生に深く関わると考えられているが、その分子メカニズムは全くわかっていない。本研究では、神経幹細胞の未分化性の維持に関与し、しかも細胞周期を制御している因子として、Bre1aおよびKlf5遺伝子を取り上げ、その機能解析を行うものである。平成25年度は、主に子宮内電気穿孔法を用い、Bre1a遺伝子を胎仔期大脳新皮質の神経幹/前駆細胞に過剰発現/機能喪失した時の表現型を解析した。その結果、神経幹/前駆細胞ではBre1a遺伝子の発現が低下することで未分化性を維持し、自己複製能が亢進することがわかった。同時に、Bre1a遺伝子のノックダウンによって神経幹/前駆細胞の細胞周期が延長することを見出した。これらの結果は、Bre1a遺伝子がヒストンH2Bモノユビキチン化を介して、分化と細胞周期との両方を制御するキーファクターであることを示唆する。一方、Klf5遺伝子については、神経幹/前駆細胞特異的なコンディッショナルノックアウトマウスの作製を完了し、現在その表現型の解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
Bre1a遺伝子のノックアウトマウスは胎生3.5日で致死となり、神経系におけるBre1a遺伝子の機能は解析できなかったが、子宮内電気穿孔法によって機能解析を進めた。Klf5遺伝子については、コンディッショナルノックアウトマウスの作製を完了し、順調に進展している。
Bre1a遺伝子の機能を詳しく解析するためには、過剰発現/機能喪失した時にヒストンH2Bモノユビキチン化に変化が見られる部位を網羅的に探索する必要がある。次世代シーケンサーを用いたChIP-seq法による網羅的解析に着手している。Klf5遺伝子については、作製したコンディッショナルノックアウトマウスの解析を進める。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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http://www.shiga-med.ac.jp/~hqphysi1/physiol1/research/bre1a.html