研究領域 | 神経細胞の多様性と大脳新皮質の構築 |
研究課題/領域番号 |
25123707
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田川 義晃 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (50303813)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 大脳皮質 / 神経回路 / 神経活動 / 発達 / イオンチャネル |
研究概要 |
本研究は、マウス大脳皮質の初期神経回路構築における自発神経活動の役割を明らかにすることをめざしている。子宮内電気穿孔法を用いて神経細胞の活動を操作する種々の分子ツールを皮質2/3層興奮性神経細胞に発現させ、回路形成過程の神経活動亢進・抑制が細胞移動、樹状突起形成、軸索投射、機能獲得にどう影響するかを検証している。本年度は以下の結果を得た。(1)細胞移動過程にある皮質2/3層細胞は細胞興奮性が低く保たれている。膜興奮性を亢進させるNa+ channel NaChBacを実験的に発現させると、細胞移動が途中でとまり、樹状突起形成が始まる。すなわち、皮質2/3層興奮性細胞の発達過程では、細胞移動が終了するまでは神経活動レベルが低く保たれることが重要であると示唆される。(2)細胞移動後に神経活動レベルが上昇する皮質2/3層細胞の神経活動を、Kir2.1を用いて抑制すると、軸索投射が途中で阻害される。ここに神経活動を戻すと、軸索投射は回復することから、軸索投射の形成に神経活動が必須であることが示唆される。(3)大脳皮質視覚野の皮質2/3層細胞の自発活動をKir2.1で抑制すると、方位選択性形成の一過程が障害される結果が得られた。以上の結果から、発達過程の皮質神経細胞の活動は厳密に制御されており、初期(細胞移動の時期)には活動は低く保たれ、後期には活動レベルが上昇すること、後期に上昇した神経活動は、軸索投射や機能(例えば方位選択性)の獲得に重要な役割を担うことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス大脳皮質の生後初期神経活動の役割を明らかにすることをめざす本研究課題において、神経活動を亢進させる実験系、抑制させる実験系をすでに確立しており、それが細胞移動、樹状突起形成、軸索投射、機能獲得に及ぼす影響もすでに明らかにしている。それぞれに関して、今後さらに詳細な解析を行うことにより、大脳皮質回路構築における初期神経活動の役割が明らかになるものと期待される。
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今後の研究の推進方策 |
時期特異的に神経活動を抑制する実験系を用いて、活動依存的な軸索投射と機能獲得に神経活動が必須の役割を果たす時期を明らかにする。また、神経活動記録とoptogenetics実験により、どのような神経活動パターンが大事なのかを明らかにすることをめざす。
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