研究実績の概要 |
これまでの研究で、R-Rasファミリー低分子量Gタンパク質は、反発性ガイダンス因子や細胞接着因子の下流で活性制御を受けることにより、神経細胞において、軸索および樹状突起双方の形態制御を担っていることを明らかにしていた。本研究期間ででは、まず、R-Rasの上流の活性制御メカニズムの一端を明らかにできた。これまでに、神経細胞において誘引性に働くことが知られていたcAMP刺激や、BDNFなどの神経成長因子の刺激によって、神経細胞内在性のR-Rasファミリーの内在性の活性化が見られた。また、細胞内のcAMPの上昇は、R-Rasファミリーの活性化を介し、アクチン制御因子のafadinの細胞膜以降を引き起こすことで、神経突起の分枝形成を担っていることが明らかになった。また、R-RasファミリーにはR-Ras, M-Ras, TC21の3つのメンバーがあるが、このうちのTC21に関して、樹状突起スパインの形態調節に関わっていることが明らかになり、RNA干渉によるTC21のノックダウンでは樹状突起スパインの数の減少が引き起こされ、恒常的活性化型の過剰発現は、樹状突起のフィロポディアの萌出が観察された。以上の結果から、R-Rasファミリーは軸索のみならず、樹状突起制御にも重要な役割を果たしており、それらの活性がガイダンス因子シグナルによって制御されていることが明らかになった。
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