公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
DNA結合タンパク質であるCTCFは、ループ構造といったクロマチン高次構造の形成に関与し、遺伝子発現を制御すると考えられている。大脳新皮質の形成過程におけるCTCFの役割を解析するため、Nestin-Creマウスを用いて神経幹細胞特異的にCTCFを欠損させたマウスを作製した。解析の結果、大脳新皮質をはじめ、様々な領域で神経細胞死が生じることが分かった。CTCFが神経幹細胞から神経細胞への分化過程で重要な働きを担っていることを示唆する。そこで、より大脳新皮質構造形成に限局してCTCFの役割を解析するため、終脳領域の神経幹細胞でのみCTCFを欠損させたマウス(CTCF cKO)を作製した。CTCF cKOマウスは、生後1日以内に死亡した。大脳が非常に小さく、Nestin-Creマウスを用いてCTCFを欠損させた場合と同様に神経細胞死が起きていることが分かった。神経細胞の分化マーカーを用いて解析したところ、CTCFが欠損した神経幹細胞からも一部は神経細胞へ分化していることが示唆された。次に、CTCFが欠損した神経幹細胞から構築される大脳新皮質を解析する目的で、CTCF cKOマウスをp53欠損マウスと交配して、CTCF欠損による神経細胞死が起きないマウス(CTCF cKO; p53 -/-)の作製をおこなった。CTCF cKO; p53 -/-マウスは、CTCF cKOマウスと同様に生後1日以内に死亡するが、大脳の大きさはCTCF cKOマウスと野生型マウスの中間型を示した。現在、CTCF cKO; p53 -/-マウスを用いて、CTCFを欠損した神経幹細胞からどのような神経細胞が生じるのかの解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
CTCFが神経幹細胞から神経細胞への分化に重要であることを見出した。一方、神経幹細胞でCTCFを欠損させると大量の神経細胞死が生じるので、解析できることに限界があった。そこで、細胞死を引き起こすシグナルに重要なp53を欠損したマウスと交配させ細胞死を生じにくくすることで、CTCFを欠損した神経幹細胞からどのような神経細胞が生じるのかの解析を進めることを可能とした。
CTCF cKO; p53 -/-マウスを用いて、CTCFを欠損した神経幹細胞からどのような神経細胞を産生することができるのかの詳細な解析をおこなう。また、CTCFの制御下にある遺伝子群を調べるため、CTCF cKO; p53 -/-マウス大脳新皮質を用いて遺伝子発現解析をおこないたい。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件)
Neuron
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Progress in Molecular Biology and Translational Science
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