研究領域 | 神経細胞の多様性と大脳新皮質の構築 |
研究課題/領域番号 |
25123712
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
遠藤 光晴 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90436444)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Wnt5a / Ror / 神経幹細胞 / 自己複製 / 中間前駆細胞 / 大脳皮質 |
研究概要 |
発生過程の大脳皮質では、神経幹細胞より多数のニューロンが産生される。ニューロン産生期の神経幹細胞は非対称分裂を介して自己複製と中間前駆細胞の産生を行う。中間前駆細胞は増殖能を維持しており、分裂を経てニューロンへ分化することで産生ニューロン数を増幅する役割を担う。我々は、これまでにWnt5aの受容体として機能するRorファミリー受容体型チロシンキナーゼRor1/Ror2が発生過程の大脳皮質神経幹細胞に高発現しており、Wnt5a-Rorシグナルが神経幹細胞の自己複製能と中間前駆細胞産生能をともに促進することを明らかにしてきた。平成25年度は、Wnt5a-Rorシグナルによる神経幹細胞の自己複製能と中間前駆細胞産生能の制御機構の解明を目的として、細胞周期の進行制御に着目して解析を行った。 胎生期マウスの大脳皮質より単離した神経幹細胞におけるRor1とRor2の発現をsiRNAにより抑制することで細胞周期を脱した細胞の割合が増加することが示された。また、増殖中の細胞を対象として、その細胞周期の長さの平均を測定したところ、Ror1とRor2の発現抑制により、細胞周期が長くなり、特にG1期が伸長していることが明らかになった。他方、精製Wnt5aで神経幹細胞を処理した場合には、反対にG1期が短縮することが示された。これらの結果から、Wnt5a-Rorシグナルは神経幹細胞の細胞周期(G1期からS期)の進行を促進する働きを持つことが示唆された。発生過程の大脳皮質では、神経幹細胞のG1期の長さと中間前駆細胞産生能との関連が示されており、Wnt5a-Ror-Dvl2シグナルは神経幹細胞の細胞周期の進行を促進することにより、神経幹細胞の自己複製と中間前駆細胞の産生亢進に寄与するのではないかと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に準じて解析を行うことにより、Wnt5a-Rorシグナルが細胞周期の長さの調節に関わることを明らかにしており、本研究計画を予定通り進めていくことができると考えられたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究結果を踏まえて、Wnt5a-Rorシグナルによる細胞周期の進行制御について、発生過程の大脳皮質においても実際に同様の機能を持つかどうかについてWnt5a、Ror1、Ror2の各種ノックアウトマウスを用いて解析を行う。また、その分子機構を明らかにするために、一次繊毛制御に焦点をあてて解析を行う。また、一次繊毛を介したWnt5a-Rorシグナルの制御機構の解明ならびに一次繊毛の形成を介した非対称分裂制御機構の解明については、上記ノックアウトマウスに加えて、平成25年度において準備したIFT20ノックアウトマウスを用いて解析を行う。
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