研究領域 | 神経細胞の多様性と大脳新皮質の構築 |
研究課題/領域番号 |
25123713
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
萬代 研二 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 特命准教授 (50322186)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 大脳新皮質 / 神経投射 / Linx / 分子神経生物学 |
研究概要 |
大脳新皮質が脳の司令塔として機能するためには、大脳新皮質と新皮質下の脳、大脳新皮質と末梢、大脳新皮質間が神経投射によって特異的に連絡されていることが必要である。内包は主として皮質-皮質下投射線維と視床-皮質投射線維よりなる脳内で最も太い神経束であり、それらの線維が互いに相互作用してお互いの軸索をガイドすることによって形成されることが提唱されている(handshake model;Molnar and Blakemore, 1995)。しかし、その分子機構は充分には明らかにされていない。一方、膜貫通タンパク質Linxは、受容体型チロシンキナーゼであるTrkAとRetに結合して後根神経節感覚神経、ならびに脊髄運動神経の軸索の伸長、分枝、ガイダンスを制御する分子として報告されている(Mandai et al., 2009)。発生期の脳では、Linxは大脳新皮質、腹側視床、外側神経節隆起などに高度に発現していたが、視床には発現が認められなかった。Linxのノックアウトマウス(KO)では内包が完全に欠損していた。また、大脳皮質に特異的な条件付きKO、ならびに、腹側視床と外側神経節隆起に特異的な条件付きKOのいずれにおいても、内包の形成に異常が認められた。さらに、Linxは視床-皮質投射線維に結合し、その軸索を伸張させた(論文投稿中)。このように、25年度はLinxの内包形成における機能と機構を中心に解析し、Linxが腹側の前脳において視床-皮質投射線維を伸長させ、それが皮質-皮質下投射線維と結合してお互いの線維を標的までガイドする分子であること、ならびに、handshake modelを説明する分子である可能性について明らかにしつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、Linxノックアウトマウスとコンディショナルノックアウトマウスを用いて、脳の内包を含む主要投射線維の形成に関しての評価を中心に行い、内包形成の機構を明らかにすることができた。その結果、約20年前に提唱された内包形成における、handshake modelを支持する物質的な根拠を得ることができたと考えている。さらに、その分子機構を明らかにするために、視床-皮質投射線維に発現するLinxの受容体の同定する実験を開始している。このように、おおむね計画通りの研究の進展を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続いて、視床-皮質投射線維に発現するLinxの受容体の同定のために、Linx抗体による免疫沈降を行う。さらに、Linxの細胞外ドメインのリコンビナントタンパク質を用いたアフィニティクロマトグラフィーを試みる。また、胎生13.5日の視床の神経細胞を培養し、タグ付きのLinxの細胞外ドメインのリコンビナントタンパク質をクラスターして培養液に加えてインキュベイトし、タグで免疫沈降する。このような手法で得たLinxに結合すると考えられるタンパク質は質量分析法によって同定する。分子生物学的手法では発現クローニング法を用いる。すなわち、胎生13.5日の視床のmRNAを得、それを鋳型としたcDNAから発現ライブラリーを作成して、COS細胞にそれらの翻訳生成物を発現させる。このようにして得た培養COS細胞にアルカリフォスファターゼでラベルしたLinxの細胞外ドメインのリコンビナントタンパク質を反応させ、Linx結合タンパク質を同定する。以上のアプローチにより、視床-皮質投射線維に発現するLinxの受容体を見出す。次に、Linxと、見出されたLinx受容体が結合することを生化学的に証明する。また、このLinx受容体が視床と視床-皮質投射線維に発現していることを示す。さらに、Linx受容体の軸索伸長とガイダンスに関わるシグナル伝達機構を明らかにするため、細胞内ドメインに結合するタンパク質の同定を行う。また、生体内でのLinx受容体の機能の解析を行うため、ノックアウトマウスの作成を開始する。ノックマウスが完成すれば、Linxのノックアウトマウス同様の内包形成の異常が見出されるか検討する。さらに、LinxとLinx受容体が、内包の形成について遺伝的相互作用するか、二重ヘテロ接合体を作成して検討する。
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