公募研究
知的障害や言語障害並びに頭部の過成長を示す患者(姉弟)についてエキソーム解析を行ったところ、両患者のAPC2遺伝子にホモのフレームシフト変異が存在することが明らかになった。細胞生物学的解析から、変異APC2タンパク質は細胞骨格に共局在せず、それらに対する制御能も欠失していることから、変異APC2タンパク質は機能欠失型変異体であることが推定された。そこでApc2遺伝子欠損マウスについて行動学的解析を行ったところ、患者と同様に、記憶・学習能の障害を示すことが明らかになった。また、Apc2遺伝子欠損マウスの骨格並びに頭部構造についてX線CTスキャンにより解析したところ、体長に対する脳周囲の長さがApc2遺伝子欠損マウスにおいて顕著に大きいことが明らかになった。さらに、患者並びにApc2遺伝子欠損マウスに共通して、脳室の拡大が観察された。以上の結果から、患者に見られる知的障害や言語障害、頭部の構造の異常は、APC2遺伝子の機能欠失によって生じたと考えられた。患者がソトス症候群と呼ばれる特定の遺伝子疾患の症状を示すことから、本疾患の責任遺伝子であるヒストンメチルトランスフェラーゼをコードするNSD1の下流遺伝子としてAPC2が機能している可能性が示唆された。そこで、マウス由来初代培養神経細胞を用いたin vitroのノックダウン実験や、子宮内電気穿孔法を用いたマウス胎児大脳皮質におけるin vivoのノックダウン実験を行った結果、Nsd1の下流遺伝子としてApc2が機能していることが明らかになった。すなわち、APC2の発現はNSD1によってエピジェネティックに制御されており、ソトス症候群に見られる神経系の症状はAPC2の発現低下によるものと考えられる。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 備考 (1件)
Cell Reports
巻: 10 ページ: 1585-1598
10.1016/j.celrep.2015.02.011.
Journal of Biochemistry
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http://www.nibb.ac.jp/pressroom/news/2015/03/06.html