研究領域 | 神経細胞の多様性と大脳新皮質の構築 |
研究課題/領域番号 |
25123722
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
畠中 由美子 生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 特別協力研究員 (40271548)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 神経科学 / 発生・分化 / 解剖学 / 細胞・組織 / 大脳新皮質 / ライブセルイメージング / 神経回路 |
研究概要 |
大脳皮質興奮性ニューロンは皮質内外の領域を結ぶ投射性ニューロンである。これらニューロンは層構造を形成し、一般的に深層には皮質外投射、浅層には皮質内投射ニューロンが分布するとされるが、詳しくみると深層では両者が混在している。これらニューロンはそれぞれさらに投射の多様性を示すが、その産生過程は不明な点が多い。これまでの研究で、深層興奮性ニューロンは、移動過程において中間帯で軸索を形成することを明らかにした。本年度は深層浅層全体を含めたこれらニューロンの軸索形成をさらに詳しく調べ、初期の軸索投射について系統的に解析した。その結果、皮質興奮性ニューロンはその初期投射パターンから外側投射するものと内側投射するものの2つに分類できることがわかった。外側投射は内側投射よりも先に現れた。それぞれの起始細胞の分子発現から、外側、内側投射はそれぞれ将来の皮質下投射と交連性ニューロンに対応すると考えられた。また、これらニューロンの層分布から、2タイプのニューロンの切換えは深層ニューロンの産生時期におこると予想された。そこで実際に同じ深層(V層)内の皮質下投射ニューロンと交連性ニューロンの最終分裂日を比較したところ、皮質下投射ニューロンの方が全体として先に分化していることがわかった。以上の結果より、皮質興奮性ニューロンはその初期投射から異なる性質を持つ2つのタイプに分類されることが明確になった。また、これまで各層に分布するニューロンと最終分裂日にはinside-outの相関があることが知られていたが、ニューロンの投射タイプと最終分裂日はより強い相関があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題として掲げた3つの項目のうち、(1)興奮性ニューロンはその初期投射パターンから2つに分類できることを明確にすること、(2)同じ深層(V層)に存在する2つのニューロンタイプの発生時期(最終分裂日)を明らかにすることはほぼ達成した。さらに(3)2つのニューロンタイプの切換えが起こる場を明らかにすることについても解析準備が整ってきているため。
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今後の研究の推進方策 |
誕生時期の差が層の枠組みを超え外側、内側投射ニューロンで2分されるということをより一般化するため、VI層内のニューロンの誕生時期についても解析する。研究課題(3)として挙げた、外側、内側投射をするニューロンタイプの切換えの場を解析するため、平成25年度までに用意した誘導型Creをもつプラスミドや、レポーターマウス、スライス培養を組み合わせて、時期特異的あるは細胞特異的な標識を行い、個体脳ならびにタイムラプス解析によってそれぞれのニューロンタイプが生じる過程な解析を進める。得られた結果をまとめ論文として発表する予定である。
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