公募研究
新皮質錐体細胞は脳室帯から皮質表面に向かう方向に順番に形成されると考えられているが、同じ深さでも多様な種類からできている可能性がある。前頭皮質第5層では同じ深度に、独立した二種類の錐体細胞、橋核投射細胞と対側皮質投射細胞が混じっている。従って、二つの投射サブタイプの皮質局所でのシナプス接続様式と外部投射様式の5層内深さ方向による違いと、サブタイプ分化・サブタイプ内多様化の形成過程を結びつけることが、第5層の機能理解には必要である。本年度はラット前頭皮質二次運動野の橋核投射細胞と対側皮質投射細胞それぞれについて、第5層内の深さによる外部投射様式の違いを、形態学的・免疫組織化学的手法を使って解析した。錐体細胞の主要サブタイプの分子的同定はCtip2発現の有無で、遠隔投射は逆行性蛍光標識トレーサーで行った。橋核投射細胞は5a層では錐体細胞のうち半分位であるが、5b層になるとその割合が増え、5b層の下半分ではかなりものが橋核投射細胞であった。橋核投射細胞の皮質下投射先は深さ方向で異なり、5a層のものは視床には軸索を伸ばすものの、5b層のものは脊髄まで投射していた。上丘へ行くものは、5a層下部・5b層上部にあった。橋核投射細胞で遠隔皮質へ投射するものは少なかったが、一次運動野や前頭眼窩皮質といった近接皮質へ、特に尾側方向へ、皮質間投射するものが5a層に見られた。二次運動野の対側皮質投射細胞では5a層のものが近接皮質ばかりでなく、嗅周皮質や後部頭頂皮質といった遠隔皮質へも投射していた。これらから、Ctip2陽性の橋核投射細胞は5層内深度によって機能分化していること、Ctip2陰性の対側皮質投射細胞は皮質深度だけでなく、同じ深さでもさらに多様化していることが考えられた。
2: おおむね順調に進展している
多様な皮質領野への投射と、その起始細胞がある皮質局所回路の関係を理解することを目指している。本年度、第5層の皮質下投射が異なる錐体細胞が、皮質間投射でも分化していることを見つけたことは、上記の目的を達成する上で大切な事だと考えている。
第5層錐体細胞の中に、皮質間投射が異なるグループを見つけたので、その軸索の投射先を同定する。更に、第2/3層の錐体細胞の投射先を解析することで、皮質間投射システムと、局所回路構成を統一的に理解する方向を目指したい。
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