研究実績の概要 |
「両生類・魚類の脊髄損傷は自発的に治癒するのに、哺乳類ではなぜ再生しないのか」という問いにアプローチするため、個体発生時に再生可能動物(幼生:オタマジャクシ)から再生不可能動物(成体:カエル)となる Xenopus を用い、脊髄損傷において神経機能再建に主要な役割を演じると考えられている上衣細胞に着目し、幼生と成体の正常・損傷後脊髄における動態を観察した。申請者は、前年度までに再生可能時期のXenopus脊髄の上衣細胞は、特定時期の胎児マウス脊髄の神経上皮細胞と同様の活性を有している事を見出していた。また、再生可能時期であるStage50, 54、再生不可能時期であるStage58, 66のいずれの時期にも細胞新生が生じている事を確認していた。この、再生可能時期・不可能時期におけるXenopus脊髄上衣細胞からの細胞新生を更に詳細に検討するため、上記のそれぞれのStageのXenopusを細胞周期S期に取り込まれるBrdUの含有水にて処理し、一定期間の後、心臓からの灌流固定を行い組織を観察した。すると、再生可能時期ではグリア細胞に加え神経細胞をも生じている事が確認できたのに対し、再生不可能時期ではグリア細胞新生しか確認できなかった。また、それぞれのStageにおいてXenopusに脊髄損傷手術を施し一定期間の後組織を観察する事で、神経細胞新生が多く生じる時期を特定し得た。更に、Xenopus脊髄の上衣細胞は哺乳類の成体脊髄と異なり、放射状グリア細胞様の形態を示す事、胎児期齧歯類脊髄とは異なった特異マーカー発現を示す事から、哺乳類の成体神経幹細胞と同様の活性を有するものと考えられる事が判明した。脊髄機能再建には神経細胞新生が重要である事が考えられたが、その機能の一部を担うと考えられるmiRNAをラットの脳内に注入する事で、このmiRNAが神経細胞を誘導可能である事を見出した。
|