研究領域 | 3次元構造を再構築する再生原理の解明 |
研究課題/領域番号 |
25124702
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
星 和人 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (30344451)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 軟骨再生医療 |
研究概要 |
現行の軟骨再生医療は、培養軟骨細胞をin vitro での基質産生を促すことなく移植するものであり、移植した細胞のどのような集団が、どのような刺激を受けて組織化するのかというメカニズムは不明である。本研究ではそのメカニズムを解明し、軟骨器官様構造体をin vitro で再現することを目的としている。 平成25年度は、移植後の軟骨再生に貢献する軟骨再生前駆細胞の同定を試みた。マウス耳介軟骨細胞をカバースリップに播種し、背部皮下に同系移植したところ、軟骨再生は島状に形成され、軟骨再生前駆細胞が生体内でモノクローナルに増殖することが示唆された。PKHの蛍光標識を指標に、軟骨細胞を分裂速度の速い群と遅い群に分取し、それぞれをin vitroで三次元培養した。分裂速度の速い群では、軟骨分化誘導刺激によりトルイジンブルー染色におけるメタクロマジーが増強し、II型コラーゲンの発現上昇が認められた。軟骨再生前駆細胞は、in vitroでは増殖速度の速い細胞であることが示唆された。 液性因子や細胞の回収が容易なマウス腹腔内移植モデルを用いて、移植母床から軟骨再生前駆細胞への刺激因子を検討した。カバースリップに播種した軟骨細胞は、腹腔内移植においても、移植後2週以降で良好な軟骨基質産生を示した。移植後、継時的に腹水を回収し、軟骨細胞への分化誘導能を検証した。移植後1週および2週の腹水上清は、軟骨細胞のII型コラーゲンの発現上昇を誘導し、軟骨細胞と腹水細胞との共培養においても、軟骨細胞のII型コラーゲンは上昇することが示された。 軟骨細胞を播種したカバースリップを腹腔へ移植し、移植後2週の腹水細胞を用いて、gene chipによる遺伝子発現の網羅的解析を行った。対照群である細胞なしのカバースリップを移植した場合に比較して、有意に発現上昇が見られる遺伝子10個、発現低下が見られる遺伝子26個を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、① 移植後の軟骨再生に貢献する細胞の同定、② 移植母床から軟骨再生前駆細胞への増殖刺激の検討、③ 移植母床からの成熟因子の同定を予定していた。腹水モデルを導入することにより効率的に実験を行い、移植母床からの刺激因子の候補を選定し、現在その検証を進めている。ほぼ予定通りに研究が進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、マウス同系移植で移植母床からの刺激因子の検討、同定をすすめる。さらに、ビーグル自家移植モデルを用いて、3次元軟骨オルガノイドの検証を行う。ビーグル(6ヶ月齢雄)から耳介軟骨組織を採取し、前項までで確立した培養法で軟骨細胞を増殖培養させる。得られた軟骨再生前駆細胞をPLLA多孔性足場素材に投与し、成熟培養法で3次元軟骨オルガノイドを作製する。背部皮下に自家移植後、継時的に組織学的、生化学的評価を行う。ついで、ヒト耳介軟骨細胞を用いて鼻軟骨、耳介軟骨、気管軟骨などの3次元軟骨オルガノイドの試作を試みる。具体的には、ヒトの顔面CTデータを基に、3次元造形にて鼻軟骨、耳介軟骨、気管軟骨の形状にPLLA多孔体を造形する。これらの足場素材に必要量のヒト軟骨幹細胞を投与し、上記培養法にてヒト由来3次元顔面軟骨オルガノイドを試作する。試作品は組織学的、生化学的に解析する予定である。
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