公募研究
腎臓は、血液中の老廃物の濾過や生体の水分と塩濃度の調整など、恒常性の維持にきわめて重要な役割をもつ組織である。ネフロンは、腎小体と尿細管からなる腎臓の機能単位であり、腎組織の再生には、このネフロンの再構築が鍵となる。転写因子Six2とLhx1は将来腎臓になる腎間充織で発現し、その前駆細胞が出現する領域の形成や、前駆細胞の複製に関わることが知られていた。最近、腎臓を破壊したゼブラフィッシュの成体に、成体から抽出したSix2あるいはLhx1を発現する細胞を移植すると、ドナー側からの血流を捉えることができるネフロンが再構築されること、この過程で腎形成に関わるPax2とPax8の発現が直ちに亢進することが示された。本研究は、遺伝子の発現調節メカニズムの解析から、腎幹細胞からネフロン再構築の遺伝子ネットワークの解明を目指すと供に、それら発現調節配列をツールと細胞をラベルするツールとして使うことで、ネフロン再構築の全体像を捉えることを目的としている。平成25年度は、腎幹細胞でのSix2とLhx1の発現を担うシス調節配列と、再生に応答して活性化するPax2とPax8のシス調節配列の同定を計画し、ファーストスクリーニングとして、これまでに発現調節配列の候補として、進化的に保存された非コード領域 (Conserved noncoding element: CNE)に着目して、Six2の遺伝子座については近傍200 kbp にある8カ所について、Lhx1ついては373 kbpに存在する23カ所について、エンハンサー活性を調べた。その結果、Six2については4カ所、Lhx1では8カ所が、腎臓のエンハンサーであることがわかった。Pax2とPax8の腎臓エンハンサーは既に同定しており、現在、Six2とLhx1の腎エンハンサーについては、腎幹細胞での発現を担う調節配列と、Pax2とPax8については再生に応答して活性化する調節配列の同定を進めている。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度は、Six2とLhx1の腎臓での発現を担う腎エンハンサーの同定を終え、幹細胞で発現する遺伝子との2重ラベルにより、腎エンハンサーの中から腎幹細胞での発現を担うもののスクリーニングを進めており、研究はおおむね計画通り進展している。
既に腎エンハンサーを同定済みであったPax2とPax8については、再生に応答して活性化するシス調節配列を同定する計画である。そのためネフロンを破壊した後に、それら腎エンハンサーの再活性について検討する必要がある。平成25年度は、ネフロンを破壊するために既に報告されているゲンタマイシンの腹腔注射法により進めていたが、実際には報告されているよりも効果が弱く、完全に腎組織を取り除くことができないことがわかった。外科的手術によりネフロンを取り除く方法が報告されていることから、平成26年度はこの方法についても検討し、再生時に再活性化するシス調節配列の同定を進める。
すべて 2014 2013 その他
すべて 学会発表 (13件) (うち招待講演 2件) 図書 (2件) 備考 (1件)
http://ochi.yu-med-tenure.com/