公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
1.尾部再生芽におけるヒストンH3K27メチル化制御因子の発現解析ツメガエル幼生尾部の再生過程において、まず脱メチル化因子のJmjd3とUtx、及びそれらと拮抗するメチル化因子Ezh2の発現をin situハイブリダイゼーション法と抗体染色によって解析した。その結果、いずれも切断後1~2日以内に再生芽で発現し始めるが、再生の進行に伴ってJmjd3の発現は脊髄と周囲の間充織細胞(筋芽細胞を含む)へと限局していくのに対して、Utxの発現は脊索に限局していくこと、Ezh2はそれらいずれの組織においても発現し続けることがわかった。特に脊髄管においては、内腔側で増殖して再生神経を生み出す上衣細胞層においてJmjd3とEzh2の強い発現がみられた。2.再生芽細胞を遺伝的に操作する実験系(Cre-loxPシステム)の構築まず、loxPエフェクターに用いる適切なプロモーターを選定するため、EF-1αプロモーターにloxP配列で挟んだtdTomato遺伝子を連結し、その後ろにVenus遺伝子を連結したものを、CMVプロモーターにCre遺伝子を連結したもの(Creドライバー)と組み合わせてツメガエルに導入した。その結果、Cre依存的にtdTomatoからVenusへの発現の切り替えがみられたが、EF-1αプロモーターに組織特異性はないにもかかわらず、Venusの発現は体節に偏っていた。そこで、EF-1αプロモーターの代わりにCAGGSプロモーターを用いたところ、ほぼ全ての組織でCre依存的な発現がみられた。以上から、ツメガエルではCAGGSプロモーターをloxPエフェクターに用いれば、Creドライバーのプロモーター活性に従ったloxPエフェクターの発現が得られるとわかったので、これを用いてヒストンメチル化制御因子のドミナントネガティブを発現するloxPエフェクター系統の作製を進めた。
2: おおむね順調に進展している
ヒストンメチル化制御因子の発現に関しては、Jmjd3とUtxの組織特異性に明らかな違いが見えてきた。Jmjd3は脊髄及び筋肉の再生、Utxは脊索の再生といったように、脱メチル化因子の間で役割分担の起きていることが予想される。Ezh2はその発現から、脊髄、筋肉、脊索のいずれの再生過程にも関与すると考えられる。特にJmjd3とEzh2が再生脊髄の前駆細胞として働く上衣細胞で強く活性化することは、ヒストンのメチル化制御が脊髄再生において積極的な役割を果たすことを示唆するものである。Ezh2については、発現解析に加えて、阻害剤(DZNep)を用いた機能阻害実験もおこなった。尾部切断後にDZNepを与えて飼育したところ、再生芽の形成がほぼ完全に阻害された。このことから、ヒストンのメチル化が再生初期に必要不可欠なことが示唆された。Cre-loxPシステムの構築に関しては、本研究がツメガエルにおける初めての本格的な試みであるので、まず基本となるDNAコンストラクトが予想通り働くかどうか検討した。特に、loxPエフェクターのコンストラクトに用いるプロモーターに組織特異性があると、Creドライバーの発現に応じたloxPエフェクターの発現が得られなくなってしまう。この点に関して、組織特異性のないCMVプロモーターでCreを発現させたとき、ほぼ全ての組織でloxPエフェクターを発現させられるものとして、CAGGSプロモーターを同定することができた。これにより、ツメガエルのCre-loxPシステムの基盤を固めることができた。
本年度は、in situハイブリダイゼーションや抗体染色による発現解析に加えて、当初予定していなかったEzh2阻害剤を用いた実験をおこなったため、Ezh2プロモーターを用いた再生芽細胞のライブイメージング解析は条件検討の段階に留まった。阻害剤を用いた実験により、再生芽形成におけるEzh2活性の必要性を確認できたので、次年度はライブイメージング解析を積極的に進める。また、ヒストンメチル化制御因子の機能解析については、予定通りCre-loxPシステムを用いる。Jmjd3やUtx、Ezh2の野生型やドミナントネガティブ変異体、TALEN等を再生芽全体あるいは再生尾部の上衣細胞や筋サテライト細胞、脊索鞘細胞等で発現させ、再生過程を追って分化マーカー等の発現あるいは細胞形態を調べ、脊髄や筋肉、脊索など各細胞系譜に与える影響を解析する。Creドライバーには、再生芽全体で活性をもつEzh2プロモーターや、上衣細胞で活性をもつFoxJ1プロモーター、筋サテライト細胞で活性をもつMyf5プロモーター等を用いる。本年度の実験結果から、loxPでCAT遺伝子を挟んでおくとCreによる組換えが胚発生期に抑制されるので、タモキシフェン誘導型Creを使わずとも、非誘導型Creを胚と再生組織で働くプロモーターと組み合わせるだけで、単純かつ効果的に再生組織を狙った強制発現をおこなえる可能性が示唆された。それゆえ、予定通りタモキシフェン誘導型Creを用いる実験と平行して、この可能性についても検討し、ヒストンメチル化制御因子の機能解析を進める。
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Endocrinology
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10.1210/en.2013-2054
http://www.nagahama-i-bio.ac.jp/guide/kyoin/detail/post-10.html