公募研究
イモリは極めて高い再生能力をもつ。その再生原理を解明して、ヒトやマウスにフィードバックする意義は非常に高い。本研究ではこれまで再生研究に広く用いられてきた日本産のアカハライモリに代わり、大量繁殖が可能なスペイン原産のイベリアトゲイモリを導入した。このイベリアトゲイモリを用いて、再生機構を解明する為の分子遺伝学実験系を樹立・整備すること、その実験系を駆使して心臓再生の開始機序を解明すること、さらにイモリで明らかにした心臓再生の開始機構がマウスではどのように機能しているかを示すことを目的に研究を進めてきた。これらの研究目的を達成する為に、当該年度は分子遺伝学実験系の樹立と整備を重点的に行った。その結果、心筋細胞特異的なタモキシフェン誘導型Cre-loxP組換え系を構築した。加えて、人工ヌクレアーゼ (TALEN)法を組み合わせた誘導型の遺伝子破壊系も確立した。心臓の損傷から心筋細胞の増殖開始に至る機構の解明に関しては、本研究によって樹立した誘導型Cre-loxP組換え系を利用することで、心筋細胞の増殖に不可欠なCyclinD1遺伝子を発現誘導できるイモリを作製した。これらのイモリを飼育して、次年度に必要な解析を進める為の準備を整えた。さらに損傷を与えたマウスの心臓に起こる応答をイモリの結果と比較するために、マウスの心臓に凍結傷害を与えて、遺伝子発現の変化や心筋細胞の増殖活性化の有無を解析した。これらの結果は次年度の研究を推進する為の重要な予備データとなる。
2: おおむね順調に進展している
本研究の計画は主に(1)再生時特異的な遺伝子発現誘導系、および遺伝子破壊実験系の樹立と整備、(2)イモリ心臓再生の開始機序の解明と、マウスの心臓再生に向けた情報基盤の確立、から構成される。このうちの(1)を重点的に推進した結果、計画された項目である心筋特異的Cre-loxP組換え系の樹立、TALEN法による遺伝子破壊イモリの作製法の確立については十分な成果を得ることができた。また、時期特異的発現系の構築については、赤外線レーザー顕微鏡システム(IR-LEGO)とヒートショック誘導型イモリを用いる方法を構築できた。さらに(2)についてもマウスを用いて予備実験を行い、重要なデータを得ることができた。これらのことから、計画は概ね順調に遂行されていると言える。
これまでの達成度を受けて、まず、TALEN法を用いた遺伝子破壊法について、より高度なコンディショナルノックアウトイモリ作製法の樹立を目指す。これに不可欠な遺伝子断片の挿入に関連する技術は日々進歩しているので、予備的な結果を得ている1本鎖オリゴDNAを用いる方法の他に加えて、報告されつつある最新の手技も導入することで、目標の達成を目指す。(2)に関しては、当初の計画通りイモリを用いた心臓再生の開始機序の研究と、マウスを用いた心筋細胞の応答能の解析を推進する。イモリに関しては昨年度作製したCyclin D1発現誘導イモリを用いて、Cyclin Dの心臓再生における機能解析を行う。併せて、再生過程における発現量の変化をq-PCR法等により明らかにする。マウスについても、損傷後の心室におけるCyclin D遺伝子の発現動態に着目しながら、イモリとの比較を行って行く計画である。
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