jmjCドメインをもちヘテロクロマチン局在を示す分裂酵母Epe1はヘテロクロマチン・ユークロマチン境界の確立、ヘテロクロマチン内転写の活性化、ヘテロクロマチンの安定化など様々な機能をもつ。ヘテロクロマチン領域にリポーター遺伝子・ade6が挿入された細胞においてepe1遺伝子を欠損させると、赤白まだらのコロニーが出現する。白いコロニーはヘテロクロマチンによって本来は抑制状態にあるade6遺伝子が発現していることを意味し、ヘテロクロマチンの崩壊を示す。一方、赤いコロニーはade6が抑制されたままの状態であることを意味する。同一の生育環境下にもかかわらずクローン間で表現型がばらつく現象を「ゆらぎ」といい、Epe1はその抑制因子と考えられる。 epe1欠損によって出現した赤と白のコロニーに対してゲノムワイドなトランスクリプトーム解析を行うと、白のみに23kbpに及ぶ転写抑制的クラスター領域が出現した。この領域はade6の上流で赤色代謝産物の合成を制御する遺伝子・ade5を含み、本来は脱抑制状態にある。そして、クロマチン免疫沈降(ChIP)法により、この領域においてH3K9meの過度な蓄積を確認した。赤白の表現型は必ずしもセントロメアのヘテロクロマチンの状態を反映しているとは限らず、ade5が異所的に形成されたヘテロクロマチンによって抑制されることも白いコロニーを生む要因のひとつであることが明らかになった。つまり、Epe1は異所的ヘテロクロマチンを解消することでエピゲノムの安定維持に寄与していると考えられた。 さらに、この異所的ヘテロクロマチンはRNAi因子が欠損すると高頻度で形成されるという興味深い結果も得た。
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