• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実績報告書

体細胞での染色体不安定性の誘導における癌精巣抗原の役割

公募研究

研究領域ゲノムアダプテーションのシステム的理解
研究課題/領域番号 25125705
研究種目

新学術領域研究(研究領域提案型)

研究機関東京大学

研究代表者

細谷 紀子  東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00396748)

研究期間 (年度) 2013-06-28 – 2015-03-31
キーワード癌 / 染色体不安定性
研究概要

近年、生殖細胞において特異的に発現し、減数分裂における染色体動態を制御すると考えられてきた分子が、体細胞である癌において異所性に発現することが報告され、その特異的な発現パターンから「癌精巣抗原」と呼ばれている。これらの分子の減数分裂における役割については分かっている部分も多いものの、体細胞で異所性に発現した場合の生物学的影響については、十分に明らかにされていない。本研究では、癌精巣抗原が体細胞における染色体不安定性の誘導に果たす役割の解明を目指す。
癌精巣抗原の1つである減数分裂特異的シナプトネマ複合体形成分子SYCP3は、体細胞において発現すると、遺伝性癌抑制遺伝子産物BRCA2と複合体を形成して相同組換え修復によるDNA二本鎖切断修復を阻害して染色体不安定性を誘導する。SYCP3がBRCA2との複合体形成を介して相同組換えを抑制する機序について検討をするために、今年度は、多数のBRCA2の欠失変異体を用いてSYCP3との相互作用部位を絞り込み、BRCA2のN末側とC末側の2箇所の200bp以内の領域を同定した。さらに、直接結合の有無を検討するために、SYCP3およびBRCA2の組換え蛋白の作製を進めた。
別の減数分裂特異的シナプトネマ複合体形成分子であるSYCE2も、乳癌細胞や造血器腫瘍で異所性に発現する癌精巣抗原である。SYCE2の体細胞における強制発現実験や、癌細胞における発現抑制実験の結果から、SYCE2が体細胞では染色体数の異常の頻度の増加やDNA損傷抵抗性を誘導することが示唆され、その分子機序を検討した。SYCE2発現細胞においては、放射線照射後のATMのSer1981の自己リン酸化の亢進が見られ、53BP1やRAD51のDNA損傷付与時の核内フォーカス形成も亢進していたことから、SYCE2の発現によりATM依存性のDNA損傷応答が活性化し、DNA二本鎖切断修復も活性化していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

癌精巣抗原SYCE2の体細胞発現によりATMが活性化することを手がかりに、同分子により影響を受けているDNA損傷応答シグナル経路について見当をつけることができたため。

今後の研究の推進方策

癌精巣抗原SYCP3については、BRCA2との直接結合の有無の証明に注力するとともに、相同組換え修復を制御する別の分子とのクロストークの有無について検討する。癌精巣抗原SYCE2については、ATMの活性化を手がかりに、直接に標的とする分子の同定を目指すとともに、DNA損傷応答制御経路の全体像の把握をめざす。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2014 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Anti-tumor activity of olaparib, a poly (ADP-ribose) polymerase (PARP) inhibitor, in cultured endometrial carcinoma cells2014

    • 著者名/発表者名
      Aki Miyasaka, Katsutoshi Oda, Yuji Ikeda, Osamu Wada-Hiraike, Tomoko Kashiyama, Atsushi Enomoto, Noriko Hosoya, et al.
    • 雑誌名

      BMC Cancer

      巻: 14 ページ: 179

    • DOI

      10.1186/1471-2407-14-179

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Targeting DNA damage response in cancer therapy2014

    • 著者名/発表者名
      Hosoya N, Miyagawa K.
    • 雑誌名

      Cancer Science

      巻: 105 ページ: 370-388

    • DOI

      10.1111/cas.12366.

    • 査読あり
  • [学会発表] がん精巣抗原SYCE1の体細胞発現によるDNA損傷抵抗性の誘導

    • 著者名/発表者名
      細谷紀子, 藤井義大、宮川清
    • 学会等名
      第36回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      神戸ポートアイランド・神戸国際会議場・神戸国際展示場・神戸ポートピアホテル(兵庫県)
  • [学会発表] 減数分裂特異的分子SMC1betaは、体細胞において、コヒーシンと干渉し、DNAの二重鎖切断の修復を阻害する

    • 著者名/発表者名
      後藤悌、細谷紀子、宮川清
    • 学会等名
      第72回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県)

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi