公募研究
前年度までに、ヒト臨床由来O26とウシ常在O26の高解像度系統解析を行い、ウシ常在O26は潜在的にヒトに対する病原性を持つことを示唆する結果を得た。本年度は、ヒト由来大腸菌とウシ由来大腸菌をO26の血清型に限定せず収集し、両者の系統的関係を詳細に解析した。ヒト由来大腸菌については、敗血症由来株を146株、健康なヒトの便由来大腸菌(ヒト常在株)53株を収集した。ウシ由来大腸菌は、全国11地域からウシの直腸便を計1666検体収集し、ヒトに腸管感染症を起こす病原性大腸菌(志賀毒素と三型分泌装置のどちらか一方か両方をもつ大腸菌、ここではヒト腸管病原性株とする)を810株とそれ以外の一般大腸菌(ウシ常在株とする)を411株分離した。まず、ヒト敗血症株、ヒト常在株、ヒト腸管病原性株、ウシ常在株の各50株について、illumina MiSeqでシーケンスし、アセンブルによりドラフトゲノム配列を取得した。次に、大腸菌K-12をリファレンスとして、各菌株のSNPsをゲノムワイドに同定し、その情報を基に、全ゲノムレベルの高解像度系統樹を作成した。系統解析の結果、ヒト由来大腸菌(ヒト敗血症株とヒト常在株)とウシ由来大腸菌(ヒト腸管病原性株とウシ常在株)の系統は、大きく異なることが明らかとなった。このことは、(1)ヒト常在大腸菌が、血液内で増殖できるようになったことでヒトの敗血症を起こしていること、(2)ウシ常在大腸菌が、志賀毒素や三型分泌装置など獲得し、偶発的にヒトに感染することで腸管感染症を起こしていること、逆に、(3)ヒト常在大腸菌がヒト腸管感染症の原因にはなりにくい、また(4)ウシ常在大腸菌がヒト敗血症の原因にもなりにくいことなどを示唆する結果である。今後は、菌株数を増やして、上記のことを確認すると共に、宿主特異性や病原性進化に関する機構を遺伝子レベルで解明するよである。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
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