研究領域 | ゲノムアダプテーションのシステム的理解 |
研究課題/領域番号 |
25125721
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
城石 俊彦 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 教授 (90171058)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 遺伝学 / ゲノム / 組換え / 進化 / マウス |
研究概要 |
昨年度までの達成点として、野生マウス集団でのPrdm9遺伝子多型の全貌を明らかにし、論文として発表した。この成果は、国立遺伝学研究所に収集されているマウス標本とそのゲノムDNAを利用して、Prdm9遺伝子の遺伝的多型解析を実験用マウス以外の野生マウス個体にも拡大し、集団内での多型の様式を他の遺伝子と比較して考察したものである。結果、Prdm9は、哺乳類の中で最も多型的な遺伝子の一つであることが明らかとなった。しかし、亜種集団ごとに特定の多型がまとまっている傾向もあり、MHCとは異なり、その多型は亜種の系統進化の系譜を反映しているように見えた。一方で、複数の亜種集団にまたがって分布しているような多型や、t-haplotype内の多型では別種からの遺伝子浸透が考えられる結果も得られた。この結果は、既報のPrdm9遺伝子が「種分化遺伝子」として働いたという仮説とは相容れない結果である。Prdm9多型は、単一エキソンにコードされるC-末端側Zinc finger array (ZFA) に集中しており、今回の実験では、ゲノムDNAからPCR法を用いてクローニングを行うことにより配列を決定した。今後、多型性の高いZFAを導入した組換えマウスを作成する場合には、そのプラスミドクローンが使用可能である。現在、そのコンストラクトが導入可能な配列をもった組換えマウスを作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「Prdm9多型の転写制御における機能解明」はコンジェニック系統を用いたRNA-Sequencingを実施する予定だったが、多型ごとにPrdm9以外の遺伝子セットが全く同一なコアイソジェニック系統を遺伝子ターゲティングにより作成する目途がついたため、行わなかった。「MHC領域内のPsmb9 hotspotでの雄特異的組換え抑制因子の解明」は再度、候補となる遺伝子を配列・多型解析から行うことにし、現在解析中である。これは抑制因子として有力な対象が見つかった場合に行うノックアウトマウス作成が、高効率で飛躍的に高速化される手法 (CRISPR-Cas9 システム) が普及しつつあるため、今後の研究計画の短縮が見込まれるためである。そのため、全体として目立った研究の遅れはない。
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今後の研究の推進方策 |
「Prdm9多型の転写制御における機能解明」、「MHC領域内のPsmb9 hotspotでの雄特異的組換え抑制因子の解明」の2点について、計画通りに進める方針に変わりはない。しかし、両計画とも最終的に求める「組換え率」を、マウスで求める効率的な方法がまだ存在していない。そこで、最終年度で研究を完結させるべく、新規に簡便な方法で精度良く組換え率を測定できるアッセイ系を開発中である。
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