前年度までに、高脂肪食負荷および肥満状態において発現変化を示すALK7リガンド候補分子5種を同定し、これらがすべて脂肪組織に高発現していることがわかった。候補分子によって、脂肪組織中の発現細胞種は、脂肪細胞、前駆脂肪細胞、マクロファージなどと、異なっていた。特に免疫血球系細胞に発現しているものについては、各種表面細胞マーカーによる分画によって、発現細胞の特徴化を行った。また、これら候補分子のリガンド活性を、ALK7シグナル下流のSmad2/3に依存するルシフェラーゼ・レポーターを発現させた細胞を用いて計測したところ、3種のリガンドが、ALK7存在下においてのみ、活性を上昇させた。このうちGDF3は、白色脂肪組織特異的に高発現が認められ、脂肪組織中、マクロファージなどの免疫血球系細胞に強く発現していることがわかった。また、過栄養状態下で発現が誘導される、上記候補リガンドのプロモーター領域に共通して結合しうる転写因子を探索し、今後、実際に細胞内で結合しているかどうかを調べる。ALK7の活性化が長期継続すると、インスリン抵抗性や慢性炎症状態を引き起こす可能性が考えられる。過栄養状態下で脂肪組織中の各種アディポサイトカインの発現解析を行ったところ、ALK7変異型マウスでは、ALK7野生型マウスに比べて、炎症性アディポサイトカインの低発現、抗炎症性アディポサイトカインの高発現が認められた。したがってALK7およびそのリガンドは、脂肪重量調節のみならず、脂肪蓄積に起因する慢性炎症病態にも関与することが示唆された。
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