公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
Brain-Derived Neurotrophic Factor(BDNF)は、主に脳内で産生分泌される神経栄養因子であるが、脳内での産生が低下するとうつ病や神経性食思不振症の原因となることが示唆されている。摂食中枢においては、メラノコルチン受容体の下流シグナルとして、TrkB受容体に作用することによって、摂食をネガティブに制御し、末梢の異化反応を促進すると報告されている。しかしながら、BDNFが中枢や末梢組織においてどのような役割を果たしているかについては、まだまだ不明な点が多い。本研究提案では、様々な遺伝子改変マウスを用いて、特に末梢のBDNF/TrkB axisが、どのように摂食や代謝・脂肪蓄積制御に関与しているかを明らかにし、今後の治療標的となりうるかについて検証することを目的とする。まず、Synapsin-Creを用いた神経細胞特異的BDNF欠失マウス(SYN BDNF CKO)では既報と同様に過食・肥満・過活動を認めた。さらにaP2-Creを用いた脂肪特異的BDNF欠失マウス(aP2 BDNF CKO)、TrkB欠失マウス(aP2 TrkB CKO)も共に過食・肥満を認め、脂肪組織のBDNF・TrkBと中枢神経系との連関の存在が示唆された。しかしこれらのマウスでもSYN BDNF CKOと同様の行動異常を認めたため、aP2 TrkB CKOマウスの中枢神経組織でのTrkB発現を確認した。脳組織全体では発現変化は明らかではなかったが、視床下部のみで評価したところTrkBの発現が減少していることが明らかとなり、そのために過食・肥満形質を呈していると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
いくつかの遺伝子改変マウスでの解析が終了している。脂肪におけるBDNF/TrkBの役割を検証するため、脂肪特異的遺伝子改変マウスも作製しており、おおむね順調に進展していると考えられる。
平成26年度には、Adipoq-Creを用いた脂肪特異的遺伝子改変マウスの解析を進めることによって、脂肪におけるBDNF/TrkBの役割を検証していく。
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