公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
近年新たなシグナル経路として注目されつつあるHippo経路は、様々なシグナル経路とのクロストークが報告されており、代謝・肥満・食欲制御に重要なPI3K経路との密接なクロストークの存在も示されている。本研究では、脂肪細胞・骨格筋細胞・膵臓β細胞・間葉系幹細胞・視床下部レプチン反応性ニューロンの組織特異的にHippo経路遺伝子を欠損するマウスを作製・解析し、Hippo経路の糖代謝・脂質代謝・肥満・食欲制御に対する作用やその分子機構、PI3K経路依存性を明示することで、Hippo経路の新知見を見出し、メタボリックシンドロームの予防や治療の礎を提示することを目的としている。平成25年度はHippo経路の主要な構成分子のひとつであり、これまでに報告されたHippo経路分子遺伝子改変マウスのうちで最も表現型が劇的であったMob1の脂肪細胞・骨格筋細胞・膵臓β細胞・間葉系幹細胞・視床下部レプチン反応性ニューロンの組織特異的欠損マウスの作製を開始した。まずはAdiponectin-Cre Tg マウスを用いた脂肪細胞特異的Mob1欠損マウスの解析を行なったところ、脂肪細胞特異的Mob1欠損マウスは通常食において20週令前後から有意に低体重を示した。低体重の原因を探るため、体重差に有意な差がみられる前の週令において行動量や摂食量を検討した。脂肪細胞特異的Mob1欠損マウスでは、意外にも行動量や摂食量に有意な差を認めないものの熱産生量が低下していることを見出した。これまでにMob1欠損による羸痩のメカニズムは明らかにできていないもののHippo経路の肥満への関与を示唆した。
3: やや遅れている
準備実験から全身性にMob1を部分欠損したマウスでは羸痩がみられたが、このマウスでは高頻度に腫瘍形成もみられるため、この表現型が代謝・肥満・食欲制御に対する作用であるかを検討するために脂肪細胞・骨格筋細胞・膵臓β細胞・間葉系幹細胞・視床下部レプチン反応性ニューロン組織特異的にMob1を欠損するマウスの作製を開始した。はじめに脂肪細胞特異的Mob1欠損マウス作製のためaP2-Cre Tgマウスを用いたところ、aP2-Creは他の組織でも発現するために腫瘍形成などがみられ早期に致死となったため解析が困難であった。次により脂肪細胞特異的であるAdiponectin-Cre Tgマウスに変更し、脂肪細胞特異的Mob1欠損マウスの作製した。この脂肪細胞特異的Mob1欠損マウスでは全身性Mob1部分欠損マウスでみられた羸痩の表現型を再現することができ、Hippo経路と肥満との関与が示唆されたが、観察期間などが長期にわたるためそのメカニズムに関してまでは平成25年度に明らかにすることができなかった。しかしながら、平成26年度は解析用マウスの準備整ってきたため、平成25年度の遅れを取り戻せることを期待している。
平成25年度に引続きAdiponectin-Cre Tg マウスを用いた脂肪細胞特異的Mob1欠損マウスの通常食時における羸痩の原因を探りつつ、高脂肪食時においての表現型も明らかにする。脂肪細胞以外の骨格筋細胞・膵臓β細胞・間葉系幹細胞・視床下部レプチン反応性ニューロン組織特異的Mob1欠損マウスのうち作製が最終段階入っているマウスの解析も併せて行なう。Mob1以外のHippo経路分子に関しても脂肪細胞・骨格筋細胞・膵臓β細胞・間葉系幹細胞・視床下部レプチン反応性ニューロン組織特異的に欠損するマウスの作製を開始しており、Mob1と同様にHippo経路の主要な構成分子であるLatsのAdiponectin-Cre Tg マウスを用いた脂肪細胞特異的欠損マウスの作製は最終段階にはいっているため、このマウスと脂肪細胞特異的Mob1欠損マウスの表現型との共通性を検討する。また、糖代謝・脂質代謝・肥満・食欲制御におけるHippo経路とPI3K経路との相互経路依存性を検討するため、Hippo経路下流分子Yap1,TazとPtenの二重(あるいは三重)欠損マウスを作製・解析を行なう。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件)
NEURO SCIENCE
巻: 258 ページ: 263-269
10.1016/j.neuroscience.2013.11.017. Epub 2013 Nov 16.
CANCER SCIENCE
巻: 104 ページ: 1271-1277
10.1111/cas.12227. Epub 2013 Aug 7.