公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
摂食行動は、異なる神経細胞集団からなるネットワークによって制御されている。この摂食制御神経ネットワークの働きは養育環境、気分、ストレス、運動、睡眠等の環境要因によって変化する。オレキシンやメラニン凝集ホルモン(MCH)は、摂食行動だけでなく、気分、報酬行動、睡眠覚醒、ストレス応答にも関与すると多くの研究室から報告されているが、遺伝子改変マウスを用いた研究結果は必ずしも一致していない。臨床医学分野で一般的なメタ・アナリシスを応用して、まずMCH遺伝子改変マウスの評価をしたところ、エネルギー産生亢進や抗肥満が最も強い因子として抽出されたほか、抗不安効果も確認された。この結果は、MCHシグナルを標的とする創薬を支持するものである。現在、投稿中である。オレキシン神経やMCH神経に代表される神経ペプチドやモノアミン産生神経は、エピジェネティック制御機構を介して環境要因を長期的な行動の変化に変換し肥満や耐糖能異常をもたらすことに関与すると考えられる。特にヒストン脱アセチル化酵素に着目しているが、MCHに特異性の高いHDACsを見出しており、オレキシン神経のHDAC4とともに、Cre-loxP システムを利用した研究を継続中である。オレキシン神経がある程度広い範囲に分布しているため、ウイルスベクターによってオレキシン神経の大部分に作用させることが課題となっている。また、オレキシン神経欠損マウスのモノアミン、神経ペプチド産生細胞でのHDACs発現を検討したところ、定常状態では野生型マウスと比べて顕著な違いがないことを確認した。肥満や断眠に伴う変化があるか検討を続ける。
2: おおむね順調に進展している
オレキシン神経のHDAC4に着目して、Cre-loxP システムを利用した研究を継続している。検討するべき課題も明瞭になってきている。ウイルスベクターによってオレキシン神経の大部分に作用させることが課題となっている。定常状態での、オレキシン神経欠損マウスのモノアミン、神経ペプチド産生細胞でのHDACs発現の検討を終えた。このように、研究計画を実施している。さらに当初の研究計画に追加してメタ・アナリシス研究が進展し、現在投稿中である。
今後の研究は、以下のように進める。メタ・アナリシスはこの分野の新しい試みであり、オレキシンについても行う。オレキシンはナルコレプシーというヒト疾患データもあわせて検討できるため、MCHよりも普遍的な意義が期待できる。Cre-loxPシステムを利用し、FLEXアデノ随伴ウイルスベクターとCreドライバーマウスを組み合わせることでオレキシン神経特異的にHDAC4 発現を低下させ、高脂肪食飼育での体重増加、摂食量およびインスリン抵抗性を検討する。前年度より継続し、オレキシン神経特異的にHDAC4 発現を低下させたマウスに脳波電極を装着し、睡眠覚醒行動と摂食行動や自発運動の連関を検討する。オレキシン神経特異的HDAC4 機能低下によりオレキシン神経を含む視床下部外側野でどのような遺伝子発現変化があるかをマイクロダイセクションによって得られた組織をもとに次世代シーエンサーを用いて網羅的に検討する。
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