研究実績の概要 |
本邦では、食の欧米化や生活習慣の多様化によりいわゆるメタボリック症候群は増加の一途を辿っている。肥満の本質は、脂肪組織内での脂肪細胞の蓄積・肥大化、あるいは脂肪組織以外の骨格筋や肝臓、血管壁等への異所性の脂肪沈着や変性、脂肪細胞の増殖や肥大化にある。脂肪細胞の起源に関する細胞レベルや分子レベルの解析は、他の前駆・幹細胞システムの解析に比して遅れているのが現状であった。しかし、近年の細胞レベルでの解析技術や洗練化された分化培養法の開発、移植実験により急速に解析が進展している。 本研究では、糖尿病、インスリン抵抗性、大中動脈の脆弱性や動脈硬化への進展への源となる異性所脂肪変性・脂肪沈着についての解析を推進させた。ヒトや実験動物の齧歯類動物のマウス筋試料を用いて、脂肪の起源となる細胞集団を同定した。極微量にしか存在しない脂肪前駆・幹細胞を表面マーカーによる探索で、単離し培養に用いたり、移植実験に用いる事が可能となった。脂肪幹細胞は、血球系マーカーは陰性であり、血小板由来増殖因子α受容体が陽性であることが特徴的であった。この特徴は種を限らないため、汎用性のあるマーカーである。国内外の有力な研究者がその手法を取り入れている状況である。その他, ヒト骨格筋では、CD90, CD166も陽性であり、間葉系幹細胞の定義に極めてよく合致した細胞である。論文公表、成果発表も順調になされたと判断している。
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