摂食促進神経ペプチドAgRPをマウス脳室内に投与すると、腹部脂肪組織の一つである副睾丸周囲脂肪組織(epiWAT)の脂肪組織内マクロファージにおいて、TNF-alpha mRNA産生が選択的に高まる事を見出した。中枢からの調節経路として交感神経系に着目し、epiWATでのノルエピネフリン代謝回転を測定した所、AgRP投与によって有意に活性が抑制された。この抑制は交感神経の外科的切除、カテコールアミン受容体拮抗薬により消失したが、別の脂肪組織である皮下鼠蹊部脂肪組織では全く抑制されず、抑制調節機構に選択性がある事を見出した。この脂肪組織内での早期に生じるTNF-alpha mRNA産生増加は、新規遊走マクロファージではなく元々脂肪組織内に存在するマクロファージ由来であり、カテコールアミン刺激によるcAMPの上昇によってサイトカイン誘導シグナルを抑制した。これは脂肪組織を支配する交感神経には、脂肪分解刺激のみならず、恒常的な炎症抑制を担う機構が存在していると考えられた。この結果は論文投稿し、レビュー中である。
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