研究領域 | 食欲と脂肪蓄積の制御と破綻の分子基盤の解明 |
研究課題/領域番号 |
25126729
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 独立行政法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
松本 道宏 独立行政法人国立国際医療研究センター, 研究所・糖尿病研究センター・分子代謝制御研究部, 部長 (90467663)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 肥満 / 脂肪細胞分化 / 細胞周期 / 遺伝子転写 / エピジェネティクス |
研究概要 |
脂肪細胞においてCITED2が脂肪蓄積に果たす役割を解明し、その役割を担う新規CITED2関連タンパクの同定を目指した研究を行っている。 in vivoにおける解析として平成25年度は、脂肪細胞特異的CITED2欠損マウスを作製し、通常食あるいは高脂肪食飼育下にて代謝表現型解析を行った。CITED2欠損マウスは対照と比べて、通常食飼育では肥満度や耐糖能・インスリン感受性などに差を認めないものの、高脂肪高ショ糖食飼育下では肥満の軽減とインスリン抵抗性の改善を認めた。CITED2欠損マウスではカテコラミン投与による酸素消費の亢進を、またCITED2欠損遊離褐色脂肪細胞でもカテコラミン投与時の酸素消費の増加を認め、 “やせ”の表現型への酸素消費増大の関与が想定された。 脂肪細胞分化におけるCITED2の機能解析として本年度は、3T3-L1細胞におけるCITED2のノックダウンが脂肪細胞分化に与える影響を検討した。CITED2のノックダウンにより脂肪細胞分化が著明に抑制された。これはPPARγ活性化剤であるロシグリタゾンの添加により回復した。遺伝子発現解析から、分化に重要な転写因子の遺伝子発現カスケードにおいて、PPARγ以降の重要な転写因子の発現が障害されており、分化の障害はPPARγの発現障害が原因と推察された。PPARγの発現誘導にはclonal expansionと呼ばれる一過性の細胞増殖が必要であるが、これはCITED2をノックダウンした3T3-L1細胞では障害されていた。 本年度はCITED2結合核タンパクの探索も行った。FLAGタグを付加したCITED2を発現させた細胞の核分画より抗FALG抗体免疫沈降産物を調製し、質量分析により網羅的に解析し、CITED2結合核タンパクの候補として約30種の分子を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に計画していた脂肪細胞特異的CITED2欠損マウスの作製と基礎的な代謝表現型解析を終えることができた。またin vitroでのCITED2の機能解析も進め、CITED2が脂肪細胞の分化に必須の分子であること、成熟脂肪細胞においてカテコラミン依存的な酸素消費を負に制御している可能性を見出すことができた。また研究計画に従いCITED2結合核タンパクの探索を行い、候補分子を得ることができた。これらの理由から上記の区分に該当すると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
脂肪細胞特異的CITED2欠損マウスが“やせ”の表現型を呈する分子機構を、今後明らかにする。“やせ”の原因としてCITED2の欠損による酸素消費の増大が考えられることから、カテコラミン感受性の亢進、熱産生の亢進、ミトコンドリア機能、特に酸化的リン酸化の亢進等を想定し、in vitroならびにin vivoでの解析を進める。 CITED2の脂肪細胞分化における役割として、これまでの研究結果からPPARγの発現誘導の際の細胞周期回転を調節するCITED2結合核タンパクの存在が重要と考えられる。網羅的に同定したCITED2結合核タンパクの中には細胞周期調節分子が複数含まれており、これらの中にPPARγの発現誘導の際の細胞周期回転を担う分子がある可能性がある。今後CITED2との結合能や機能欠損/獲得実験による分化への影響などを候補分子ごとに検証し、責任タンパクを同定し、細胞周期回転へのCITED2の関与を明らかにする。また培養細胞系で見られた分化障害が、in vivoでもみられるのかを、CITED2ヘテロ欠損マウスを作製し検証する。
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