研究領域 | ミクロからマクロへ階層を超える秩序形成のロジック |
研究課題/領域番号 |
25127704
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
道上 達男 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (10282724)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 神経領域規定 |
研究概要 |
①外胚葉細胞の形状データから神経領域境界を可視化する試み ツメガエル胚において、神経胚期までに外胚葉に誘導される神経領域について、各細胞の形状データだけから神経ー表皮境界を可視化出来るかどうか研究を行った。まず、原腸胚~神経胚期の外胚葉領域をファロイジン染色、あるいは細胞膜局在GFPタンパク質注入によって細胞形状の画像データを取得した。これを元に、独自に開発したプログラムにより1細胞を頂点と辺からなる多角形に単純化した「細胞グラフ」を描画した。得られた細胞グラフをもとに、ある頂点が持つ情報(いくつの細胞が共有するか、隣接する別の頂点ではどうか、など)を記述することで、外胚葉の任意のエリア(小グラフ)を約500に分類した。このパターンの変化を調べた結果、神経領域と表皮領域を境にそのパターンが変化することを見出した。この結果は単純な細胞形状の中に、領域毎の違いを包含していることを示唆している。 ②外胚葉領域における細胞骨格の経時観察 原腸胚~神経胚の神経領域における細胞骨格の細胞内局在の変化を知ることで、細胞にどのような力がかかっているかを知るため、本年度は細胞膜とアクトミオシンに結合するタンパク質として知られるmoesinに着目し、moesin-GFPを作成してGFPの局在を調べた。その結果、原腸胚期の外胚葉細胞において、細胞のある辺だけが強いシグナルを発するなど特徴的なパターンを示すことを明らかにした。この結果は、外胚葉において力のかかり方に何らかの法則性がある可能性を示しており、興味深い。 また、アクチニン、GFP、mcherryを用いた張力プローブを胚に注入し、FRETを観察することにより、やはり外胚葉にかかる力を実測する試みも行っている。これについては、現在の所FRETは検出できているものの、神経、表皮及びその境界部において特徴的なパターンを見出すには至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題①に関しては、論文を1編公表することができ、おおむね目標としていた部分は達成できた。この部分については、現在派生的な研究を進めており、現在論文投稿中である。課題2については、これまでの研究成果と併せ、論文を1報、関連論文を1報公表することができた。しかしながら、本年度に成果を期待していた張力プローブの条件設定がまだ必要で、この点においては達成度は残念ながら高くない。その一方、細胞骨格に結合するタンパク質の解析では、神経誘導が引き起こされている外胚葉細胞において、何らかの力の掛かり具合の違いを見出すことができており、張力プローブ解析の進展の遅さをある程度カバー出来たと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、課題②に関して主に展開を図りたい。特に、moesin-GFPを用いた解析をより詳細に行う(タイムラプス観察による経時的変化の解析など)とともに、別のイメージング解析を行うことにより神経領域の可視化を目指したい。現在、ミオシン軽鎖-GFPを用いたイメージング解析のための準備を行っており、外胚葉での観察を通して神経領域と表皮領域の違いを明らかにしたいと考えている。また、課題1の成果を統合することも考えており、特に細胞形状からのデータだけでなく、moesin-GFPやミオシン軽鎖-GFPの局在パターンから同様のコンピューター解析を行い、神経外胚葉と表皮外胚葉の違いを見出したい。
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