(1)胚における細胞張力の実測の試み FRETプローブを用いた張力実測系の開発を行った。まず、GlashoffらのプローブをXenopus injection用に改変し、これを胚に注入した。しかし、明瞭なFRET光を検出することが出来なかった。そこで、別の張力プローブを用意した。具体的には、N末端・C末端を分割したアクチニンと二種の蛍光タンパク質、更には両者を連結するリンカータンパク質からなる融合タンパク質をコードしている。これをツメガエル胚に注入し、胚内でFRETを検出できるかどうかを検討した。その結果、ツメガエルの原腸胚から神経胚期にかけてFRET光を観察することができ、更に、膜局在性GFPの蛍光パターンとは異なり、張力が発生していると思われる膜部分でFRET光が弱くなるという画像を取得することが可能となった。本プローブについては、別途研究により、培養細胞でもバリデーションを行い、期待される効果を確認している。本結果は、他の既存のプローブが必ずしも適切に機能しない中、本プローブが研究に適用できることを実際に示したものであり、当該課題における今年度の大きな進展である。
(2)神経領域境界の規定に関わるPRDM12遺伝子の機能解析 本年度は、当初予定以外に、神経領域境界の規定機構に関して別アプローチからの研究を進展させるため、神経領域境界に位置する口蓋プラコードの形成に関わるエピゲノム因子PRDM12の機能解析を行った。PRDM12の過剰発現により、プラコードに隣接する神経堤形成の阻害、ノックダウンにより拡大がそれぞれ観察され、さらにはChIP解析から神経堤遺伝子の調節に関わることが明らかになった。本遺伝子の機能解析結果は、神経外胚葉由来領域である神経堤と、表皮外胚葉由来であると考えられているプラコードの境界の明瞭化にエピゲノム機構が重要な役割を果たすことを示している。
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