血管内皮細胞がメッシュワークを形成するメカニズムに関して、これまではVEGFの濃度勾配をベースにした走化性モデルや、細胞外基質の変形を基盤としたモデルが提案されてきた。我々は、フィブリンゲル内でのヒト臍帯由来内皮細胞 (HUVECs) のパターン形成ではこのどちらも働いていないことを実験的に検証した。次に、内皮細胞がパターン形成の最中に活発にfilopodiaを伸ばしてランダムな運動をしていることに着目して、細胞がランダムサーチで繋がってメッシュワーク構造を形成するモデルを提唱した。この枠組みは時間ダイナミクスがないシンプルな系だが、既存のパーコレーション理論と関連づけられることが期待される。また、個々の細胞がどの範囲まで探索できるかに関して、細胞質を染色して計測し、deconvolution処理で細胞質の存在範囲を算出した。しかし、現在の方法では非常に細いfilopodiaについては観測できていない可能性があるため、さらなる手法の発展が必要である。 また、フィブリンゲル内でのメッシュワーク形成後、ヒト肺由来線維芽細胞 (LF)と内皮細胞を共培養すると、内皮細胞が管腔を形成し、その中に液体を流せるようになる。このような管腔形成に関しては、先程のランダムコネクションモデルの結果のビットマップ画像を初期状態として、管腔が一定速度で広がっていく形のモデルを作成した。これによって実際の管腔構造と極めて近い形状が数値計算で再現できるようになった。
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