研究領域 | ミクロからマクロへ階層を超える秩序形成のロジック |
研究課題/領域番号 |
25127710
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
富樫 英 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90415240)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 細胞・組織 / 発生・再生 / 形態形成 |
研究概要 |
鼻腔にあって嗅覚に重要な嗅上皮を頂端面側から観察すると、嗅細胞と支持細胞という2種類の細胞が特徴的なモザイク様のパターンに並んでいる。本研究では、嗅上皮組織と培養細胞をモデルに、細胞間接着と細胞骨格を制御する因子の操作を行い、細胞配列の制御機構を解明することを目標としている。 これまでに、発生過程の嗅上皮では細胞の再配列運動によって、嗅細胞と支持細胞が特徴的なモザイク様の細胞配列を形成すること、さらに、嗅上皮の嗅細胞と支持細胞では異なるサブタイプのα-カテニンを発現していることを明らかにした。培養細胞を用いた実験から、異なるサブタイプのα-カテニンを発現する細胞が、それぞれ異なる接着力を持つことから、α-カテニンが細胞間接着と表面張力を制御する鍵となる分子であると想定し、現在検討を行っている。また、これによって嗅細胞と支持細胞の表面張力の違いを生み出すメカニズムを明らかにし、培養細胞を用いて検証する予定である。本年度は他にも、発生過程のマウス嗅上皮の組織培養法を樹立した。現在、この技術を用いて、培養下で細胞骨格等の阻害実験を行い、細胞配列への影響を培養下で検討するとともに、嗅上皮を構成する細胞の表面張力を直接測定することを行っている。また、嗅上皮の細胞再配列運動の過程ではアクトミオシン系の集積に非対称な分布が見られることから、アクトミオシン系の非対称な分布を制御する分子機構を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
嗅上皮組織の培養技術を確立したことにより、今後、細胞骨格や細胞接着分子を標的に様々な阻害実験を行い、これらの分子により嗅上皮の細胞配列が制御されているメカニズムを解析することが可能になった。今回、確立した嗅上皮組織の培養とともに、細胞境界がEGFPで標識された遺伝子改変マウスを用いることで、細胞の再配列運動が培養下でも観察できることから、様々な応用が期待できる。特に、細胞境界面をレーザーによって切断する実験では、切断後の細胞形態の変化を比較することで、細胞間に働く張力を比較することが出来ると期待している。また、嗅細胞特異的な遺伝子欠損マウスを用いた細胞配列への影響の検討や、培養細胞を用いた細胞選別実験についても、予定通り進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究によって得られた結果から、細胞接着分子と細胞骨格に着目して、嗅上皮の細胞再配列を制御する機構について幅広く検討していく。細胞境界を標識した遺伝子改変マウスを用いた嗅上皮のレーザーアブレーション実験により、嗅細胞、支持細胞の細胞境界に働く張力の比較を行う。また、嗅上皮の細胞再配列運動の過程ではアクトミオシン系の集積に非対称な分布が見られることから、アクトミオシン系の非対称な分布を制御する分子機構を検討する。さらに、細胞選別において重要と考えられる接着分子に着目して嗅細胞特異的なノックアウトマウスを用いて、嗅上皮の細胞配列への影響を検討し、細胞選別モデルを個体レベルで検証する。他にも、培養細胞を用いてネクチンやカドヘリンなどの異なるファミリーの細胞接着分子間で制御される細胞内シグナル伝達分子に着目して、細胞から組織レベルにおける形態形成機構を総合的に解析を進めていく予定である。
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