研究領域 | ミクロからマクロへ階層を超える秩序形成のロジック |
研究課題/領域番号 |
25127713
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
作村 諭一 愛知県立大学, 情報科学部, 准教授 (50324968)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 細胞形態形成 / 数理モデル / 神経発達 |
研究概要 |
多細胞による器官形成では、細胞は周囲の情報を感知しつつ所定の場所に移動する。または、神経細胞のように周囲の情報に基づきながら突起を適切な方向に伸ばすことで脳という器官が形成される。このような細胞による「周囲の情報に基づく方向決定と実際の細胞運動」はマクロな器官形成のための素過程として重要であるが、未解明な点が多い。これまで細胞移動・運動の意思決定問題について多くの研究がなされているが、ほとんどが生化学的な局所活性と広域抑制に基づくものである。本研究課題では、生化学以外の物理量である膜電位と力も生物学的シグナルと捉え、細胞移動・運動をこれら多元的変数からなる定量数理モデルで説明することを目的とする。 25年度は、基本モデルの設計を行った。具体的には、膜電位とCa2+濃度の動態の解析、細胞が発生する力の分布と運動に対する寄与について考察し、それらを統合する数理モデルを構築した。細胞形態の表現方法として、当初はPhase Field法を採用していたが、モデルの開発段階ではもっと簡素な表現方法が適しているため、現状ではバネ・ダンパからなる多角形モデルを採用している。研究代表者は、細胞外のSema3AシグナルからcGMPを経て神経成長円錐の膜電位を制御する分子システムの推定をベイズ理論で行う研究に従事してきた。膜電位の伝搬は分子拡散に比べて圧倒的に高速であることを利用し、膜電位による広域情報伝達のモデルを考案した。現在、膜電位と力に関する量を統合して形態形成に至る基本モデルが完成している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度は、コアとなる原理を見出すため、定性的で簡素なモデル構築に専念することを目的としていた。そのため、25年度目標はおおむね達成できたと考える。膜電位依存性の軸索誘導については、プレリミナリな結果として表現することができており、この点においては計画以上に推進できていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
26年度の目標は、定量モデルの構築を目的とする。具体的には、実験データを用いたモデルパラメータ推定、および膜電位依存の誘導の再現である。多元的な物理量の関係を数式表現し、パラメータはこれら要素間の量的再現性を満たすように最適化法で決定する。データの数の不足やノイズの問題に対しては、ベイズ理論などの機械学習法を用いる。膜電位依存の軸索誘導の実現可能性は、25年度に静的な条件で定性的には示している。26年度では、動的な条件で定量的に実現することを目的とする。
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