研究領域 | 複合適応形質進化の遺伝子基盤解明 |
研究課題/領域番号 |
25128704
|
研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
瀬々 潤 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (40361539)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | バイオインフォマティクス / 異質倍数体 / 遺伝子発現 / ゲノム解析 / 多重検定 |
研究概要 |
複数の形質進化が重なって環境に適応した時,中間状態は不安定なため観測できず,完成した複合適応形質のみが観測可能な事が多い.どのようなゲノム・遺伝子の特徴の変化が,複合適応形質に寄与したかを調査する手法の開発が,本研究の目標である. 適応前後の差異を調べる第一歩として,新型シーケンサを利用して遺伝子発現量やゲノム配列を観測し,差のある遺伝子群に着目する方法がある.本年度は,この一例として,植物のモデル生物であるシロイヌナズナの近縁種,ミヤマハタザオのゲノム解読を行うと共に,遺伝子発現量の観測を行った.ミヤマハタザオは,その両親種であるハクサンハタザオとオウシュウミヤマハタザオに比べ,生息域が広域であり,また,土壌の性質も,適応域が大きく,複雑な適応形質を有している.しかし,この種のゲノムや遺伝子発現量解読は,通常のモデル生物とは異なる.なぜなら,近縁種2種の雑種(異質倍数体)であり,非常に類似した染色体を二対ずつ,また,多くの遺伝子に関しても類似の配列の遺伝子(ホメオログ)を有している.このため,既存のPCRやマイクロアレイでの発現量同定が困難であった.この問題点に対して,我々は新型シーケンサを利用することで,ホメオログを区別した遺伝子発現の同定に成功した.更に,環境によるホメオログ利用の変化が統計的に有意か否かを判定する手法の開発も行った. 同時に,より複雑な現象をとらえるため,複数の要因が複合的に重なって表現型が現れた時,その現象が有意か否かを判定できる数理統計手法を開発した.今までは,過剰な補正により複合要因の統計的優位性を示すことが困難だったが,その問題を解消する事が可能となった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度は,解析理論の構築と,実問題への適用による問題の洗い出しを中心に添えていたが,異質倍数体のゲノム解析,複合要因発見の統計の何れにおいても,その目的を達成することができた.特に,異質倍数体のゲノム解析においては,今までゲノム解析は大人数のチームを構成して研究を推進する必要がある事が多かったが,シーケンサ技術の発展と,情報処理法の発展により,今回,我々は,たったの4名でゲノム解析,遺伝子予測,発現解析までを行うことに成功した.予想以上のスピードで,研究が進展したお陰である.また,符号要因の統計に関しても,多重検定補正法の開発,更に,より精度の高い方法の開発と,順調に進み,様々な研究者や企業から引き合いが来る状態になっている.
|
今後の研究の推進方策 |
異質倍数体の解析に関しては,発現情報が取れたとはいえ,まだ一歩目である.より多くの環境のデータを解析し,近縁種ながら多様な形質が生まれる,物質的な現象解明へと繋げて行く.複合要因の統計は,その解析の中で活きるものである.変異がどのように組み合わさって変異が起きているのか,平成25年度に作成した手法を元に,その現象の解明へと進む.
|