新型シーケンサーを活用し,異質倍数体種のホメオログ(異種間ホモログ遺伝子)を分けた遺伝子発現量の高精度な定量化に成功した.これにより,ゲノム重複で起こる進化の分子基盤解明を発展させることができた.ゲノム重複あるいは,それに類する異質倍数化は,生物,特に植物が,新しい環境に適応していく能力を獲得する重要なイベントと考えられるが,その様子を観測できる可能性を示した.また,異質倍数化直後の状態であっても,ホメオログの種間使用比率は安定的に制御されていることを見出した.ホメオログの使い分けは,ランダムに行われる,あるいは,片方が完全に発現を無くし,サイレンシングするかの二元論で扱われることも多かったが,本研究により,そのような二元論ではなく,A種とB種由来が30%対70%と言った,比率の制御が行われていることが明らかになった.更に,環境を変えると,ほとんどのホメオログにおいては,この親種比率に変化は見られなかったが,極少数(1.11%)のホメオログは,統計的に有意な変動を示していた.これらのホメオログは,ストレス適応に関連したものが多いことから,比率の変化は短期的な環境応答能を高めるために利用されている可能性が示唆された.以上の中で,詳細の遺伝子制御に関しては未だ未知であるが,進化生物において未知の現象を,情報科学と数理統計学を使って解き明かすことができつつ有る. また,複合適応形質の制御において,制御因子の進化を調べることは重要である.しかしながら,複合的に働く制御因子の解析は容易ではなかった.本研究では,無限次数多重検定補正法(LAMP)を開発し,複合的に働く転写因子を統計的有意性を持って計量することが可能となった.実際に異なる系統を交配した際の温度感受性転写因子の解析などの進化解析に利用が始まっている
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