研究概要 |
ハマウツボ科寄生植物は、吸器と呼ばれる宿主への侵入器官を発達させ、宿主から栄養を奪って生育する特殊な生存戦略を獲得している。ハマウツボ科には条件的寄生植物と絶対寄生植物があり、その進化の過程で種子サイズや光合成能の退化などの複数形質の適応進化が生じている。本研究では、条件的寄生植物コシオガマにおける寄生過程で特異的発現を示す遺伝子の機能解析により寄生の鍵遺伝子を同定し、コシオガマおよび絶対寄生植物ストライガの比較ゲノム解析により寄生形質の複合適応形質進化の過程を解明することを目的とする。 1.コシオガマにおいて寄生時に特異的に発現する遺伝子の機能解析 前年度までの成果としてトランスクリプトームにより寄生時に特異的に発現上昇する遺伝子リストを得ている。中でも、宿主との相互作用で特異的に発現するプロテアーゼをコードする遺伝子群に着目し、コシオガマおよびストライガから全長cDNA配列とゲノム配列をPCRにより増幅、シーケンス配列決定した。プロモーター領域を単離し、GUSまたはGFPレポーター遺伝子上流にクローニングしたコンストラクトを作成し、Agrobacterium rhizogenesを用いた毛状根形質転換法によりコシオガマ根に導入し、発現部位の特定を試みた。 2. コシオガマゲノム解読 コシオガマのゲノム解読を進めた。自家受粉を繰り返した純系統からゲノムDNAを抽出し、短いインサートサイズ(180 bp)のフラグメントライブラリと様々な長さ(500 bp, 3 kbp, 5kbp, 10kbp, 20kbp)のインサートサイズによるジャンプライブラリをを作成し、illumina HiSeq2000による解析をおこなった。また、PacBioシーケンサーにより8倍深度程度のロングリードシーケンスを解析し、アセンブリに加えることを試みている。
|