公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本研究の目的は、次世代シークエンサーがもたらす個人の全ゲノム情報(パーソナルゲノム情報)から、真に疾患に寄与するDNAバリアントを取り出すための方法を確立することである。平成25年度中に、人類集団の急速膨張モデルを仮定し、ヒトゲノム中に存在するバリアントの総数やその頻度といったアリル頻度構成(ゲノム多様性)の情報に関する、理論的予測を行い、さらに、標準中立モデルを帰無仮説とする各種中立性検定において、急速膨張モデルを帰無仮説と変更することで、より柔軟で妥当なモデルに立脚した余剰バリアントの同定と削減、効果バリアントの同定とプーリングの手法に関する開発を下記の手順により行った。1)既報で行われた、標準中立モデルの下でのヒトゲノムのアリル頻度構成の予測を、理論的にフォローした。2)急速膨張モデルを仮定してアリル頻度構成を予測した。3)上記の予測を、1000Genomesや東北メディカルメガバンクから取得した実際のデータを照らし合わせて検証した。4)これらの実際のデータを利用して、急速膨張モデルの下で、ゲノム領域ごとの有効集団サイズや遺伝的荷重(淘汰係数)の推定を行っている。以上から、急速膨張モデルの下で、主要なゲノム領域ごとに帰無仮説を設定し、それに従って統計量を計算することで、従来の中立性検定をより妥当で効率的に行おうとしている。また、上記のような基準で、実際のパーソナルゲノム情報を分析することで、ヒト集団で疾患に対して寄与しうるバリアントと余剰なバリアントの分布を得ることができた。この分布から、余剰バリアントの削減と効果バリアントのプーリングを行うことが可能となり、例えば1000万以上のバリアントを10万~100万単位にまで次元削減を行うことが出来れば、主要な効果サイズの疾患バリアントの同定が現実的になると期待される。
2: おおむね順調に進展している
本研究計画は、1)急速膨張モデルの下でのヒトゲノムのアリル構成と突然変異荷重を予測し、余剰バリアントの削減と効果バリアントのプーリングによる次元削減の手法を開発すること、2)高次元変数選択による効果バリアント同定の新しい遺伝統計学的アルゴリズムを開発し、安価なGPGPU環境での実装すること、の2点を柱とし、平成25年度には上記1)の実施を計画した。現在までに、当初の予定通りの解析を実施し、予想以上の知見が得られている。
平成25年度で行われた次元削減の結果を受けて、そのようなデータを用いた疾患バリアント同定のための遺伝統計アルゴリズムを、高次元変数選択の枠組みを用いて開発し、GPGPU環境に実装する。このようにして開発されたソフトウェアを班員に公開し、当該領域で行われている多くの脳疾患のパーソナルゲノム情報の分析をサポートする。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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