研究実績の概要 |
強い転写活性を有する白血病融合蛋白MLL-AF9によって発現が直接活性化されるhuman lincRNAを, 臍帯血CD34+造血幹・前駆細胞を3xFlag-MLL-AF9で形質転換した細胞を用いて、ChIP-sequence, RNA-sequence解析によってプロファイリングした。その結果、MLL-AF9の十分な結合が得られ, 特異性の高いMLL-AF9の標的遺伝子リストが得られた。同時におこなった転写活性化のヒストンマークであるH3K4me3のChIP-sequenceデータと照合することにより, coding遺伝子97個に加えて, 非遺伝子領域に約20のlincRNA の転写開始点付近にMLL-AF9の特異的な結合を確認した。さらに, MLL-AF6を有する白血病細胞株ML2で抗MLL抗体を用いてChIP-sequenceを行い, その結果と併せて検証することにより, MLL-AF9によって直接転写が活性化されるlincRNAを11に絞り込んだ。ヒトCD34+造血幹・前駆細胞のRNA-sequenceも行ったところ, リストアップした多くlincRNAが正常造血幹・前駆細胞にも発現していることを確認した。また, manual 定量ChIP-sequencingにより11の候補lincRNAのTSS付近へのMLL-AF9の結合を検証したところ, いずれにおいても結合が確認された。RNA-sequenceと定量RT-PCRで候補lincRNAの発現を検討したところ, HoxA9やMeis1のようなMLL-AF9の代表的な標的遺伝子と比較して、発現は全般的に低い傾向にあったが, これはlincRNAに共通した特徴であり、発現が低いながらも機能を有するものと考えられる。今後は、候補lincRNAの白血病幹細胞の特性維持における機能を, ノックダウンと強制発現解析により検証するとともに, lincRNAによる白血病幹細胞における遺伝子発現制御機構を明らかにしていく予定である。今回同定されたlincRNAの中にはMLL-AF9の重要な標的遺伝子の転写活性化機構に関与するものが存在するものと考えられ, 新規治療標的として期待される。
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