公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本計画は独自に開発した大腸上皮細胞の初代培養系を応用し癌化モデルによる正常幹細胞由来癌幹細胞の形成を空間的・経時的に解析することで癌幹細胞の特異性、機能維持機構を解明することを目的とする。本年度は、マウス由来大腸上皮の初代培養を行い、in vitroにおける炎症発がんモデルを確立するため、初代培養細胞にAOM処理を行い、さらに種々のサイトカインにて刺激するなど条件検討を行った。幹細胞可視化に関しては、レンチウイルスを用いて蛍光タンパクであるmCherryを初代培養細胞に導入することにより、1幹細胞の可視化に成功した。小腸初代培養細胞においてTLR5は基底側に限局して発現しており、フラジェリン添加によりサイトカインを産生することが明らかとなった。NFkB p65の免疫染色によりNFkBシグナルが作動する細胞を同定し、幹細胞も炎症刺激によりシグナルが作動することを明らかとした。また炎症発がんの特徴である粘液産生がんに着目し、粘液産生に寄与するAtoh1蛋白の機能解析を行い、粘液産生のみならずがん幹細胞性質、抗がん剤耐性機構まで関与することを明らかとし、TNFαがAtoh1蛋白を安定化させることにより、粘液形質を獲得することを発見した。以上の成果は当初の研究計画をおおむね順調に遂行しており、ヒト大腸初代培養の確立および幹細胞可視化への条件検討は炎症発がんのモデルだけでなく、種々の病態、疾患予測に有用であると期待される。
2: おおむね順調に進展している
本年度の成果により、大腸初代培養細胞を用いた長期慢性炎症モデルを構築でき、一部細胞の形質転換を確認できている。さらに幹細胞の可視化技術を構築し、1幹細胞の機能評価を可能としており、幹細胞から癌幹細胞への形質転換機構を解析できる状況へと進歩していることから、今年度の目標はおおむね達成できたと考える。
来年度は本年度の研究成果をさらに発展させ、長期炎症刺激モデルにおける大腸初代細胞の形質転換機構およびがん化機構を明らかとすると共に、1幹細胞を持続観察することで、幹細胞形質転換およびがん幹細胞への機能獲得機構を解明することを方策とする。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 5件)
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