公募研究
「癌幹細胞を標的とする癌治療法」の開発にむけて、研究代表者らは、Doublecortin-like kinase 1(Dclk1)が「癌幹細胞特異的マーカー」であることを見いだした。本研究ではDclk1を手掛かりとして、新規の癌幹細胞特異的マーカーを同定することを目的とした。さらに、Dclk1陽性細胞がCox1/2を高発現していることから、Cox/プロスタグランジンによる癌幹細胞・ニッチ維持機構の検証も目指した。そこで、平成26年度には、以下の検討を行った。1.新規の癌幹細胞特異的マーカーの同定:Dclk1陽性の腫瘍幹細胞で特異的に発現している因子を、Rac2、Tmem141など複数同定した。これら因子のいくつかは、Lgr5陽性の腫瘍幹細胞にも発現していた。ヒト大腸癌細胞株およびマウス腸腫瘍スフェロイドで、これら因子の阻害実験を行ったところ、腫瘍の増殖が抑制された。また、胃癌、膵臓癌、胆嚢癌などのモデルマウスを作出し、Dclk1をはじめとするこれらの因子が、腸以外の消化器臓器でも癌幹細胞マーカーとして機能する可能性を見いだした。2.プロスタグランジンによるオートクライン/パラクライン的な癌幹細胞・ニッチ維持機構の検証:ApcMinマウスに対してCox阻害剤を投与すると、Dclk1陽性細胞の減少とともに、腫瘍が退縮することがわかった。マウス腸腫瘍スフェロイドでも同様に、Cox阻害剤によってDclk1陽性細胞は減少し、スフェロイドの増大が抑制された。これらのことから、Cox/プロスタグランジンが腸腫瘍幹細胞の維持に何らかの役割を果たしていることが示唆された。これらの検討を通じて、癌幹細胞とニッチの本質に迫るとともに、正常組織幹細胞には傷害を与えずに、癌幹細胞のみを標的とする新しい癌治療へ向けた基礎的知見を得ることができた。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Gastroenterrology
巻: 147 ページ: 407-417
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doi: 10.1002/ijc.28445.