公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
膠芽腫は最も悪性度の高いがんの一つであり平均生存期間はいまだ1年程度である。膠芽腫は脳の特殊性から境界部分を含め広く取り除くことはできず、腫瘍本体部分の摘出にとどまることが多い。放射線化学治療を追加しても、腫瘍摘出腔周囲からの再発が多いことから、治療抵抗性で再発の原因となる膠芽腫幹細胞および膠芽腫幹細胞ニッチが摘出腔周囲に残存していると考えられる。この境界領域で特異的に変化するマイクロRNAを同定し機能解析を行により、膠芽腫幹細胞と膠芽腫幹細胞ニッチを標的とした新規治療法の開発が本研究の目的であり、膠芽腫患者の予後とQOLの改善に貢献したい。膠芽腫手術時の摘出組織から腫瘍部分、境界部分、辺縁部分(正常に近い)部分を別々に採取し、それぞれの半分の組織で病理学的検討を行い、凍結保存しておいた残り半分の組織からmiRNAを精製しmiRNAマイクロアレイによる解析を行った。12例の解析を行い、これまでに報告されている膠芽腫で高発現し、正常脳で低発現のmiRNA-21や逆に正常脳で高発現し、膠芽腫で低発現するmiRNA-124、 miRNA-128の発現の確認により実験結果の正当性を検証した。特異的に腫瘍境界部で高発現するmiRNAを同定し、摘出膠芽腫組織を用いたmiRNA in situ hybridizationで組織内での発現も確認した。これまでに樹立してきた膠芽腫幹細胞をマウス脳内に移植した脳腫瘍モデルで検討すると、このmiRNAは形成された腫瘍組織内ではなく腫瘍周囲での発現を認めた。現在このmiRNAの発現ベクターを導入した、ヒト正常アストロサイトと膠芽腫幹細胞を樹立し、in vitroの実験を行っている。次にノックダウン実験を行い、テトラサイクリンでの発現誘導によるin vivo実験を計画している。
3: やや遅れている
標的となるmiRNAの同定ができ、膠芽腫組織および膠芽腫幹細胞のマウス脳内移植モデルを用いたin situ hybridizationで標的miRNAの発現確認実験も終了している。miRNA発現ベクターの入手に時間がかかり、凍結保存していた膠芽腫幹細胞の増殖が悪かったため、若干進行は遅れているが、実験自体は計画通りに進行している。
標的miRNAの安定発現細胞株を作成し、in vitroでの増殖能、浸潤能、遊走能の検討実験を進めている。次に、ノックダウンでの実験を行い、tet-on systemを用いたin vivoでの抗腫瘍効果を検討する。miRNA発現ヴェクターを膠芽腫幹細胞、ヒト正常アストロサイトに導入し、単独移植実験および同時移植実験で腫瘍形成能や浸潤能を検証する。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
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