研究領域 | ゲノム複製・修復・転写のカップリングと普遍的なクロマチン構造変換機構 |
研究課題/領域番号 |
25131703
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
山下 孝之 群馬大学, 生体調節研究所, 教授 (10166671)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | DNA複製 / 発がん遺伝子 / ゲノム不安定性 / Yファミリー・ポリメラーゼ / 突然変異 |
研究概要 |
活性化がん遺伝子による異常なDNA複製は、発がん過程を促進するゲノム不安定性の主な原因として注目を集めている。 特にDNA再複製は二重鎖切断を生じ、ゲノムの欠損、増幅、再構成などを引き起こすと考えられるが、これに関与するDNAポリメラーゼについては、ほとんど判明していない。私たちは、Yファミリー・ポリメラーゼ(Y-Pol)の関与を示唆する予備的知見を得て、その機構や意義について解析を行った。私達はヒト細胞にがん遺伝子サイクリンEを過剰発現 によるDNA再複製にともない複製フォーカスにY-PolのひとつであるPol-etaが動員されることを見出した。そこで、ヒト細胞U2OSにおいてgeminin をノックダウンし、G2期停止からDNA再複製による高倍数体が出現するモデル系を用いて、DNA再複製している細胞に特異的に複製フォーカスへのPol-etaの動員が見られ、RNAiによるPol-etaの発現抑制が、再複製 におけるDNA合成速度を有意に抑制することを見いだした。これらの結果は、DNA再複製にPol-etaが関与することを示唆する。また、 私達はcyclin EによるDNA再複製がPol-eta発現抑制によって低下することも証明した。これらの結果は、活性化がん遺伝子が引き起こすDNA 再複製にPol-etaが関与することを示唆し、がんゲノムの不安定性の分子機構を理解する上で新しい知見を提供する。さらに、私たちは発がん遺伝子c-mycによるDNA複製異常へのPol-etaの関与、Pol-eta以外のY-Polも発がん遺伝子によるDNA複製に関与する知見を得て、これらについて研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) DNA複製開始制御因子であるgemininの発現抑制や、発がん遺伝子cyclin Eによって誘導されるDNA再複製にYファミリー・ポリメラーゼのひとつPol-etaが関与することを示唆する結果を得た。また、その分子機構に、一本鎖DNAの増加がRad18を活性化を介して起こるPCNAのモノユビキチン化が重要な役割を果たすことを明らかにした。 2) その他の発がん遺伝子c-mycが引き起こすDNA複製異常にも、Pol-etaが関与することを示唆する結果を得ている。また、Pol-eta以外のYファミリー・ポリメラーゼも関与することを示唆する予備的知見を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
1) c-mycによるDNA複製にPol-etaが関与することを証明し、その分子機構を明らかにする。また、Pol-eta以外のYファミリー・ポリメラーゼの役割を明らかにする。 2) DNA複製のepigeneticなメカニズムによる制御機構が明らかになりつつある。そこで、これらに関与する因子がYファミリー・ポリメラーゼの制御に与える影響をスクリーニングする。
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