メディエーター複合体が中核となる転写とクロマチン構造変換の協調的制御機構の解明

2014 年度 実績報告書

• 研究領域: ゲノム複製・修復・転写のカップリングと普遍的なクロマチン構造変換機構
• 研究課題/領域番号: 25131704
• 研究機関: 長崎大学
• 研究代表者: 大熊 芳明 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (70192515)
• 研究期間 (年度): 2013-04-01 – 2016-03-31
• キーワード: メディエーター複合体 / クロマチン構造変換 / クロマチン修飾複合体PRC2 / レチノイン酸 (RA) / 神経細胞分化 / 転写 / ヒストンH3K27トリメチル化 / サイクリン依存性キナーゼCDK8/19

研究実績の概要

真核生物では、転写シグナルは転写因子とメディエーター複合体に伝わり、クロマチンと転写を協調的に制御して、RNAポリメラーゼII(Pol II)による転写開始や伸長への移行をもたらす。研究代表者らは、ヒトのメディエーター複合体のキナーゼサブユニットCDK8とCDK19がPol IIのCTD領域のリン酸化を行い、転写活性化と抑制の双方を制御することを報告している。そしてCDKに直接結合するタンパク質として４つのクロマチン構造変換関連因子(BRG1、SUZ12、BCL6、PRMT5)を同定した。またPRMT5については直接、メディエーターの活性と連動していることを示した。以上から、メディエーターを介する転写とクロマチン構造の協調的制御の存在が示唆される。そこで本研究は、さらに協調的制御を実証し、その機構を解明することを目的とした。
近年、メディエーターは細胞分化に関わることが報告され、代表者らもレチノイン酸(RA)処理による胚性癌腫細胞株Ntera2 cl.D1(NT/D1)の神経細胞分化の系を用いて、メディエーターとSUZ12を含むクロマチン制御複合体PRC2がRA応答遺伝子にどう作用するかを解析した。短期(2時間)と長期(48時間)RA処理し、短期応答遺伝子(Cyp26a1とLefty1)、長期応答遺伝子(NanogとPax6)上の挙動を調べた。その結果、NanogのみがRA処理で発現が低下すること、短期応答遺伝子の方がCDK8/19により明確に制御されていることが明らかになった。特に、Cyp26a1遺伝子ではRA処理でCDKを含むメディエーターがプロモーター上にリクルートされるのと同時にSUZ12が解離し、そのPRC2複合体によるヒストンH3K27トリメチル化修飾も減少することがわかった。以上より今回、転写とクロマチンの協調性が示され、またその機構も明らかにできたと考える。

現在までの達成度 (段落)

27年度が最終年度であるため、記入しない。

今後の研究の推進方策

27年度が最終年度であるため、記入しない。

研究成果

• [国際共同研究] ミュンスター大学(ドイツ)
  • 国名: ドイツ
  • 外国機関名: ミュンスター大学
• [国際共同研究] ヘルシンキ大学(フィンランド)
  • 国名: フィンランド
  • 外国機関名: ヘルシンキ大学
• [雑誌論文] Human SCP4 is a chromatin-associated CTD phosphatase and exhibits the dynamic translocation during erythroid differentiation. (2016)
  • 著者名/発表者名: Wani S, Sugita A, Ohkuma Y, Hirose Y.
  • 雑誌名: Journal of Biochemistry 巻: 159 ページ: ー
  • DOI: 10.1093/jb/mvw018
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Human mediator MED17 subunit plays essential roles in gene regulation by associating with the transcription and DNA repair machineries. (2015)
  • 著者名/発表者名: Kikuchi Y, Umemura H, Nishitani S, Iida S, Fukasawa R, Hayashi H, Hirose Y, Tanaka A, Sugasawa K, Ohkuma Y.
  • 雑誌名: Genes to Cells 巻: 20 ページ: 191-202
  • DOI: 10.1111/gtc.12210
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Association of the winged helix motif of the TFIIEα subunit of TFIIE with either the TFIIEβ subunit or TFIIB distinguishes its functions in transcription. (2015)
  • 著者名/発表者名: Tanaka A, Akimoto Y, Kobayashi S, Hisatake K, Hanaoka F, Ohkuma Y.
  • 雑誌名: Genes to Cells 巻: 20 ページ: 203-216
  • DOI: 10.1111/gtc.12212
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] PRDM16 enhances nuclear receptor-dependent transcription of the brown fat-specific Ucp1 gene through interactions with Mediator subunit MED1. (2015)
  • 著者名/発表者名: Iida S, Chen W, Nakadai T, Ohkuma Y, Roeder RG.
  • 雑誌名: Genes and Development 巻: 29 ページ: 308-321
  • DOI: 10.1101/gad.252809.114
  • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Pharmacological characterization of [trans-5'-(4-amino-7,7-dimethyl-2-trifluoromethyl-7H-pyrimido[4,5-b][1,4]oxazin-6-yl)-2',3'-dihydrospiro(cyclohexane-1,1'-inden)-4-yl]acetic acid monobenzenesulfonate (JTT-553), a novel acyl CoA:diacylglycerol transferase (DGAT) 1 inhibitor. (2015)
  • 著者名/発表者名: Tomimoto D, Okuma C, Ishii Y, Akiyama Y, Ohta T, Kakutani M, Ohkuma Y, Ogawa N.
  • 雑誌名: Biological and Pharmaceutical Bulletin 巻: 38 ページ: 363-369
  • DOI: 10.1248/bpb.b14-00655
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Calorie restriction-mediated restoration of hypothalamic signal transducer and activator of transcription 3 (STAT3) phosphorylation is not effective for lowering the body weight set point in IRS-2 knockout obese mice. (2015)
  • 著者名/発表者名: Senda S, Inoue A, Mahmood A, Suzuki R, Kamei N, Kubota N, Watanabe T, Aoyama M, Nawaz A, Ohkuma Y, Tsuneyama K, Koshimizu Y, Usui I, Saeki K, Kadowaki T, Tobe K.
  • 雑誌名: Diabetology International 巻: 6 ページ: 321-335
  • DOI: 10.1007/s13340-015-0205-3
  • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Mediator complex cooperatively regulates transcription of retinoic acid target genes with Polycomb Repressive Complex 2 during neuronal differentiation. (2015)
  • 著者名/発表者名: Fukasawa R, Iida S, Tsutsui T, Hirose Y, Ohkuma Y.
  • 雑誌名: Journal of Biochemistry 巻: 158 ページ: 373-384
  • DOI: 10.1093/jb/mvv055
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Vertebrate Ssu72 regulates and coordinates 3'-end formation of RNAs transcribed by RNA polymerase II. (2014)
  • 著者名/発表者名: Wani S, Yuda M, Fujiwara Y, Yamamoto M, Harada F, Ohkuma Y, Hirose Y.
  • 雑誌名: PLoS One 巻: 9 ページ: 1642-1648
  • DOI: 10.1371/journal.pone.0106040
  • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Transcription cofactor PC4 plays essential roles in collaboration with the small subunit of general transcription factor TFIIE. (2014)
  • 著者名/発表者名: Akimoto Y, Yamamoto S, Iida S, Hirose Y, Tanaka A, Hanaoka F, Ohkuma Y.
  • 雑誌名: Genes to Cells 巻: 19 ページ: 879-890
  • DOI: 10.1111/gtc.12187
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Human mediator subunit MED15 promotes transcriptional activation. (2014)
  • 著者名/発表者名: Nakatsubo T, Nishitani S, Kikuchi Y, Iida S, Yamada K, Tanaka A, Ohkuma Y.
  • 雑誌名: Drug Discovery and Therapeutics 巻: 8 ページ: 212-217
  • DOI: 10.5582/ddt.2014.01036
  • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Human RNA polymerase II-associated protein 2 (RPAP2) interacts directly with the RNA polymerase II subunit Rpb6 and participates in pre-mRNA 3'-end formation. (2014)
  • 著者名/発表者名: Wani S, Hirose Y, Ohkuma Y.
  • 雑誌名: Drug Discovery and Therapeutics 巻: 8 ページ: 255-261
  • DOI: 10.5582/ddt.2014.01044
  • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
• [学会発表] Mediator complex cooperatively regulates transcription of retinoic acid-target genes with Polycomb repressive complex PRC2 during neuronal differentiation (2015)
  • 著者名/発表者名: Yoshiaki Ohkuma, Satoshi Iida, Taiki Tsutsui, Yutaka Hirose, Rikiya Fukasawa
  • 学会等名: BMB2015日本生化学会日本分子生物学会合同年会
  • 発表場所: 神戸ポートピアホテル（兵庫県神戸市）
  • 年月日: 2015-12-01 – 2015-12-04
• [学会発表] CpGオリゴ核酸によるTLR9を介した転写制御機構の解析 (2015)
  • 著者名/発表者名: 山本誠司、萩原衆子、堀内祥行、奥井 文、和仁翔太郎、吉田徳幸、井上貴雄、田中亜紀、松久明生、廣瀬 豊、大熊芳明
  • 学会等名: BMB2015日本生化学会日本分子生物学会合同年会
  • 発表場所: 神戸ポートピアホテル（兵庫県神戸市）
  • 年月日: 2015-12-01 – 2015-12-04
• [学会発表] ヒトメディエーター複合体hMED17サブユニットによる転写制御とＤＮＡ損傷修復機能の解明 (2015)
  • 著者名/発表者名: 菊地祐子、西谷沙織、深澤力也、梅村啓靖、田中亜紀、廣瀬 豊、菅澤 薫、大熊芳明
  • 学会等名: BMB2015日本生化学会日本分子生物学会合同年会
  • 発表場所: 神戸ポートピアホテル（兵庫県神戸市）
  • 年月日: 2015-12-01 – 2015-12-04
• [学会発表] 転写コファクターPC4と基本転写因子TFIIEβサブユニットとの転写における協調的制御機構 (2015)
  • 著者名/発表者名: 秋元勇亮、飯田 智、広瀬 豊、田中亜紀、大熊芳明
  • 学会等名: BMB2015日本生化学会日本分子生物学会合同年会
  • 発表場所: 神戸ポートピアホテル（兵庫県神戸市）
  • 年月日: 2015-12-01 – 2015-12-04
• [学会発表] 基本転写因子TFIIEα winged helix領域の機能解析 (2015)
  • 著者名/発表者名: 田中亜紀、福岡瑞希、小林聡子、大熊芳明
  • 学会等名: BMB2015日本生化学会日本分子生物学会合同年会
  • 発表場所: 神戸ポートピアホテル（兵庫県神戸市）
  • 年月日: 2015-12-01 – 2015-12-04
• [学会発表] ヒト転写メディエーター複合体の2つのCDKサブユニットと相互作用する因子の同定 (2015)
  • 著者名/発表者名: 林 裕人、安倍光姫、山崎愛実、深澤力也、廣瀬 豊、大熊芳明
  • 学会等名: BMB2015日本生化学会日本分子生物学会合同年会
  • 発表場所: 神戸ポートピアホテル（兵庫県神戸市）
  • 年月日: 2015-12-01 – 2015-12-04
• [学会発表] 基本転写因子TFIIBとTFIIEによる転写開始の制御機構 (2015)
  • 著者名/発表者名: 中村考秀、田中亜紀、秋元勇亮、郭 丹慧、大熊芳明
  • 学会等名: BMB2015日本生化学会日本分子生物学会合同年会
  • 発表場所: 神戸ポートピアホテル（兵庫県神戸市）
  • 年月日: 2015-12-01 – 2015-12-04
• [学会発表] リン酸化CTD結合因子PCIF1による遺伝子発現調節機構 (2015)
  • 著者名/発表者名: 杉田 愛、柳澤奈月、和仁翔太郎、田淵圭章、大熊芳明、廣瀬 豊
  • 学会等名: BMB2015日本生化学会日本分子生物学会合同年会
  • 発表場所: 神戸ポートピアホテル（兵庫県神戸市）
  • 年月日: 2015-12-01 – 2015-12-04
• [学会発表] 転写活性と協調した選択的ポリ(A)付加調節の分子機構 (2015)
  • 著者名/発表者名: 廣瀬 豊、畑山 光、西村和也、寺田公介、大熊芳明
  • 学会等名: BMB2015日本生化学会日本分子生物学会合同年会
  • 発表場所: 神戸ポートピアホテル（兵庫県神戸市）
  • 年月日: 2015-12-01 – 2015-12-04
• [学会発表] 基本転写因子TFIIEによる転写開始から伸長への移行の制御機構解析 (2015)
  • 著者名/発表者名: 中村考秀、田中亜紀、秋元勇亮、郭 丹慧、大熊芳明
  • 学会等名: 日本薬学会北陸支部第127回例会
  • 発表場所: 富山大学医薬系臨床講義室（富山県富山市）
  • 年月日: 2015-09-01
• [学会発表] 哺乳動物メディエーター複合体キナーゼモジュールの機能解析 (2015)
  • 著者名/発表者名: 藤田智陽、安倍光姫、菊地祐子、林 裕人、森 寿、廣瀬 豊、大熊芳明
  • 学会等名: 日本薬学会北陸支部第127回例会
  • 発表場所: 富山大学医薬系臨床講義室（富山県富山市）
  • 年月日: 2015-09-01
• [学会発表] リン酸化CTD結合因子PCIF1による遺伝子発現調節機構 (2015)
  • 著者名/発表者名: 杉田 愛、柳澤奈月、和仁翔太郎、田淵圭章、大熊芳明、廣瀬 豊
  • 学会等名: 日本薬学会北陸支部第127回例会
  • 発表場所: 富山大学医薬系臨床講義室（富山県富山市）
  • 年月日: 2015-09-01
• [学会発表] 基本転写因子TFIIEとTFIIBによる転写開始の制御機構 (2015)
  • 著者名/発表者名: 中村考秀、田中亜紀、廣瀬豊、大熊芳明
  • 学会等名: フォーラム富山「創薬」
  • 発表場所: 富山国際会議場（富山県富山市）
  • 年月日: 2015-05-28
• [学会発表] Ssu72はRNAポリメラーゼIIにより転写されるRNAの3’末端形成を制御する (2015)
  • 著者名/発表者名: 和仁翔太郎、藤原洋介、山本真也、大熊芳明、廣瀬豊
  • 学会等名: フォーラム富山「創薬」
  • 発表場所: 富山国際会議場（富山県富山市）
  • 年月日: 2015-05-28
• [学会発表] メディエーター複合体と転写因子BRD4との機能的関連性の検討 (2015)
  • 著者名/発表者名: 林 裕人、田中亜紀、廣瀬 豊、大熊芳明
  • 学会等名: 第33回日本生化学会北陸支部会
  • 発表場所: 富山大学医薬系臨床講義室（富山県富山市）
  • 年月日: 2015-05-18
• [学会発表] 基本転写因子TFIIEによる転写開始と伸長の制御機構の解析 (2015)
  • 著者名/発表者名: 郭 丹慧、保田幸子、廣瀬 豊、田中亜紀、今中常雄、大熊芳明
  • 学会等名: 第33回日本生化学会北陸支部会
  • 発表場所: 富山大学医薬系臨床講義室（富山県富山市）
  • 年月日: 2015-05-18