公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
ファンコニ貧血(FA)原因遺伝子群の構成するFA経路は、DNAクロスリンク(ICL)修復と染色体ストレス応答に必須の役割を果たす。従来の研究からFA経路の中心分FANCD2の機能はクロマチン上で発揮されることが判明している。まず、クロマチン上に存在するFANCD2の相互作用分子を同定する目的で、FLAG-HA-FANCD2発現ヒトHeLa細胞を構築した。ヒドロキシウレア処理でFA経路を活性化させた細胞から、クロマチン画分を調整し、その画分からFANCD2を精製し、結合分子をプロテオーム解析し、CtIPを同定した。In vivo, in vitroの解析から、CtIPの166-273アミノ酸残基領域とFANCD2のモノユビキチン化が、FANCD2とCtIPの直接結合と、CtIPのフォーカス形成に必須である。ICL修復において、FANCD2とCtIPは相同組換えの初期反応である2本鎖DNA末端からの削り込み(エンド・リセクション)に必要であり、クロマチン上のFANCD2がCtIPをクロマチンにつなぎ止める役割を担うことを明らかにし、論文発表した(Unno等、印刷中)。また、一般にクロマチンリモデリングとヒストン修飾との密接な関連が知られている。昨年度までの本領域公募研究で我々が明らかにしたFANCD2のヒストンシャペロン活性により引き起こされるDNA損傷部位でのクロマチン動態の変化を、チミジン類似体であるEduを用いたiPOND法により検出することを試みている。DNA損傷に伴うFANCD2の集積を検出することに成功しているが、検出効率が低い(数%)ため、現在、FANCD2を指標に実験条件の検討・改善を行っている。
2: おおむね順調に進展している
クロマチン上に存在するFANCD2の機能解析については、まず、プロテオーム解析により、FANCD2の新規結合分子としてCtIPを同定、解析し、クロマチン上のFANCD2がCtIPをクロマチンにつなぎ止める役割を担うことを明らかにした。これらの成果は論文として発表した(Unno等、印刷中)。また、我々の明らかにしたFANCD2のヒストンシャペロン活性は、クロマチン上に存在するFANCD2の示す新規機能であり、この活性の生理学的意義を明らかにすることが重要である。従来の研究から、クロマチン上のFANCD2には、FA経路の下流分子であるヌクレアーゼFAN1、Slx4/FANCPとその結合分子ヌクレアーゼXPF/FANCQがリクルートされることが知られている。FANCD2のヒストンシャペロン活性がこれらの下流分子を制御する可能性を検討するため、FANCD2のヒストンシャペロン活性変異体を発現させた細胞を構築し、GFPタグ付きの下流分子を導入する手順で細胞株の構築を進めており、順調に推移している。最後に、FANCD2のヒストンシャペロン活性により引き起こされるDNA損傷部位でのクロマチン動態の変化を、チミジン類似体であるEduを用いたiPOND法により検出することを試みている。DT40細胞を用い、DNA損傷に伴うFANCD2の集積を検出することに成功しており、現在、FANCD2を指標に条件検討を行っている。以上の状況から、研究はおおむね順調に進行していると判断した。
1.FANCD2シャペロン活性がFA経路の下流分子に与える影響の検討クロマチン上のFANCD2に直接リクルートされるFA経路下流分子としてFAN1, Slx4, CtIPなどに注目し、現在アッセイのための細胞株構築を進めている。細胞が完成次第、フォーカス形成、クロマチン局在などの下流分子の動態を解析し、FANCD2シャペロン活性の影響を明らかにする。2.FANCD2ヒストンシャペロン活性にカップリングするクロマチン動態の解析DNA損傷に伴うDNA修復反応により新成DNA鎖領域に結合するタンパク質を解析するiPOND法を使用し、現在行っている検出条件の最適化を完了する。完了次第、ヒストン修飾タンパク質を含むDNA損傷応答・DNA修復タンパク質の集積・離脱やヒストン修飾変化の有無などの経時的変化などを解析し、DNA損傷領域やその周辺部位のクロマチン動態を明らかにする。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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