公募研究
本研究の目的は、DNA損傷により停止した転写装置がDNA複製フォークの進行にどのような影響を与えるのかを分子レベルで解明し、転写装置により進行が阻害されたDNA複製がどのようにして回復するのかを明らかにすることである。本研究では、バルキーアダクトDNA損傷としてベンツピレン付加体を用い、leading鎖およびlagging鎖に導入した鋳型DNAを調製することとしていた。昨年度の研究により、特定の部位にベンツピレン付加体を導入した鋳型DNAを用いた複製フォークの進行の阻害および回復の過程の詳細を明らかにした。しかし、in vitro oriCプラスミドDNA複製系での複製産物を詳細に検討した結果、複製を開始した分子の大部分が特定の長さまで伸長反応を進めた後で停止していることが明らかとなった。その後の解析から、これは複製フォークの進行に伴う正の超らせんの蓄積が原因であることが判明し、DNAジャイレースがそれ以降の複製フォークの進行に重要な働きを持つことが明らかとなった。鋳型の超らせん状態はRNAポリメラーゼのプロモーター結合や転写反応の進行にも大きな影響を及ぼすことが考えられる。そこで、本年度では、DNAジャイレースを含まない反応系で複製装置と鋳型DNAの複合体を形成させた後に、その複合体を分離する実験系の開発を試みた。タグを付加したTusタンパク質を用いて、ter配列を含むoriCプラスミドをアフィニティビーズで分離する実験系を構築し、分離された複製中間体複合体がDNAジャイレースを再添加することにより、複製フォークの進行が再開することを確認した。今後は、この系を用いて、DNA損傷を持つ鋳型DNA上での複製フォークのダイナミクスについて詳細な解析を行う。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件)
Nucleic Acids Research
巻: 43 ページ: 1715-1725
10.1093/nar/gkv044
巻: 42 ページ: 8461-8472
10.1093/nar/gku547