ゲノムDNA上のDNAメチル化パターンはDNA複製時に、DNA情報同様に正確に娘DNAに伝達される必要がある。これはDNAメチル化酵素1 (DNMT1)を中心とする維持DNAメチル化機構により制御されており、この分子機構の破綻は異常な発生・分化をもたらす。また、近年ではがん細胞において異常なDNAメチル化パターンが高頻度で報告されており、維持DNAメチル化の分子メカニズムの解明は重要な課題と考えられる。申請者は、これまで維持DNAメチル化を試験管内で再現可能であるツメガエル卵抽出液由来の無細胞系を主に用いて、ヒストンH3のUHRF1ユビキチンリガーゼによるユビキチン化がDNMT1のメチル化部位へのリクルートに重要な役割を果たすことを報告してきた。また、その過程でDNMT1とともに脱ユビキチン化酵素であるUSP7がDNAメチル化部位で機能するという知見を得た。 26年度はDNAメチル化における脱ユビキチン化酵素の役割について検討した。またDNMT1とUSP7の相互作用領域について詳細な解析を行なった。まず脱ユビキチン化酵素(DUB)の特異的阻害剤を卵抽出液に加え、そのDNA複製及び維持DNAメチル化に対する影響を調べたところ、DUB阻害剤存在下においてDNA複製はほぼ正常に進行する一方、DNAへのメチル基の取り込みは大きく減少した。これと一致して、DUB阻害剤処理に伴い、クロマチン上におけるDnmt1とユビキチン化H3の過剰な蓄積が観察された。これはDUB活性がDNMT1のユビキチン化H3によるメチル化部位へのリクルート以降のプロセス、例えばDNMT1の活性化などに重要であることを示唆している。また欠失変異体を用いた解析から、USP7がこれまで機能が不明であったDNMT1のBAHドメインを介して、DNMT1と相互作用することが示された。
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