研究領域 | ゲノム複製・修復・転写のカップリングと普遍的なクロマチン構造変換機構 |
研究課題/領域番号 |
25131719
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
橋本 吉民 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (50616761)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | DNA鎖間架橋 / レプリソーム / 複製フォーク / アフリカツメガエル卵無細胞系 / 複製再開 / オーキシンデグロン法 / GINS |
研究概要 |
DNA鎖間架橋(ICL)部位は、DNA複製と連携した複雑な経路で修復されることが知られている。アフリカツメガエル卵無細胞系を用いた研究から得られた最新のモデルでは、一カ所のICL部位に2つの複製フォークが両側から衝突して崩壊し、その後ファンコニー経路によって修復されると考えられている。しかしながら、2つのフォークが両方向から衝突するという状況は、レプリコンサイズの小さいプラスミドを鋳型として用いた場合に得られたものであり、レプリコンサイズの大きい染色体上でも同様のことが起きているのか不明である。そこで、本研究では、ICL部位に加えてもう1カ所複製フォークを停止させる部位をプラスミドへ導入することにより、ICL部位へは1つのフォークしか衝突しないという状況を作り出し、フォークが崩壊した後、どのように処理されるのかを卵無細胞系で調べるという計画を進めてきた。研究進展の鍵となるのは上で述べた2カ所をフォークを止めることが可能な鋳型プラスミドの作製であるが、未だ十分な量と質の鋳型プラスミドを作製できていない。 本研究の大きな目標の一つは、複製と連携したICL修復の仕組みの解析を通して、崩壊した複製フォークとレプリソームは再生され得るのか、あるいは再生されず反対側からのフォークの到着を待って局所的修復を受けるのかを明らかにすることである。そこで、当初の計画にはなかったが、オーキシンデグロン法を用いて停止したフォークにおいてレプリソーム因子を分解除去した後に、複製再開が起きるかどうかを卵無細胞系を用いて検討した。その結果、停止したフォークからレプリソーム因子であるGINSを除いても、新たにGINSが存在すれば複製再開するが、GINS非存在下では複製再開が起きないことを明らかにした。このことは、レプリソームは再生可能であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の遂行には、一方向からICL部位と複製フォークを衝突させることのできる鋳型プラスミドの作製が必須であるが、技術的に困難であり十分な質と量を確保できていないことが研究が遅れている最大の理由である。しかし、当初の計画に無かったオーキシンデグロン法を用いた研究を導入してある程度の成果があったので、全体としてはやや遅れている程度であると判断できる。 鋳型プラスミド以外に、卵無細胞系での免疫除去解析に必要な複製・修復関連因子に対する特異的抗体の作製については順調に進んでおり、これまでにSld5、Cdc45、FANCG、FANCD2などに対する抗体を準備した。
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今後の研究の推進方策 |
計画通りに研究を遂行するためには、鋳型プラスミドの作製を完了する必要があるので、今年度前半は特にこれに力を注ぐ。上手く行かない場合は、ICL導入プラスミドの作製に実績のある他の研究室との共同研究を行うことにする。鋳型が作製できれば、ツメガエル卵無細胞系での解析に移行する。特に、二次元電気泳動によるフォーク構造の解析、複製産物長のPAGE解析、クロマチン免疫沈降によるレプリソーム・修復系因子の動態解析を行い、一方向からICL部位と衝突した後のフォークプロセシング機構についての知見を得る。 一方、オーキシンデグロン法を用いたレプリソーム崩壊誘導システムは比較的容易に確立できたため、これを利用してレプリソーム再生の詳細な分子機構を解析していく予定である。
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