公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
ヒトなどの哺乳類では、X染色体の数が雄 (XY) と雌 (XX) との間で異なっているため、常染色体上の遺伝子量に対するX染色体上の遺伝子量が異なっている。そのため発生の初期に雌の2本あるX染色体のうち1本を、ほぼ全域に渡って不活性化するという遺伝子量補償機構が存在し、その結果見かけのX染色体の数が雄でも雌でも1本となる。不活性化されたX染色体は、バー小体と呼ばれる凝縮した染色体構造 (ヘテロクロマチン) として観察され、この染色体高次構造が遺伝子発現の抑制に関わると考えられてきたが、どのような分子メカニズムで形成されるのかやその意義はわかっていなかった。今回、ヘテロクロマチン構成因子HP1と結合する新規因子の探索からHBiX1-SMCHD1複合体を同定し、この複合体がヒト不活性化X染色体の凝縮に必要であることを見いだした。さらに、X染色体不活性化に関わる既知の経路との遺伝的関係や、次世代シーケンサーを用いたChIP-seq解析によるHBiX1-SMCHD1の染色体上での高精度な局在位置の同定によって、HBiX1-SMCHD1複合体による不活性化X染色体凝縮の分子メカニズムのモデルを提唱することができた (Nozawa, Nagao, Igami et al., Nat. Struct. Mol. Biol. 2013)。またHBiX1-SMCHD1複合体の知見を発展させるため、種間での保存性を検証できるマウス細胞の系や、染色体構造をより詳細に観察できる多色プローブによるFISH法の系を立ち上げることができた。
2: おおむね順調に進展している
不活性化X染色体の凝縮に関わるHBiX1-SMCHD1複合体を明らかにすることができ、論文として発表することができた。また、この複合体が、X染色体だけでなく常染色体上での染色体高次構造にも関わっているという知見をヒト、マウスで得ることができている。
ヒト細胞を用いたChIP-seq解析では、活性化X染色体と不活性化X染色体とを区別して解析したり、遺伝学的に同一な雄、雌細胞を準備することが不可能である。マウス細胞を使った系によりこの点を解決し、種間を通して保存されたHBiX1-SMCHD1の作用機構を明らかにする。またヒトとマウスで共通してHBiX1-SMCHD1によって制御を受ける領域を解析することで、常染色体上におけるHBiX1-SMCHD1の作用点を明らかにする。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Nat. Struct. Mol. Biol.
巻: 20 ページ: 566-573
doi: 10.1038/nsmb.2532
実験医学
巻: 31 ページ: 1771-1775
http://altair.sci.hokudai.ac.jp/infgen/nsmb2013/