研究領域 | 性差構築の分子基盤 |
研究課題/領域番号 |
25132708
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
島田 昌之 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (20314742)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 卵 / 妊孕性 / 受精 |
研究概要 |
卵巣の排卵過程におけるNeuregulin 1 (NRG1)の機能解析を行うために,胞状卵胞の顆粒膜細胞特異的にNrg1遺伝子の機能を欠失させたNrg1flox/flox;Cyp19a1Creマウスを作出した.本雌マウスを野生型雄マウスと交配し,妊孕性を確認した結果,一腹産子数の低下が認められた.この原因を探索すべく,排卵数,黄体形成を検討したが,野生型雌マウスとの間に著しい差は認められなかった.しかし,卵の減数分裂進行を経時的に観察した結果,Nrg1欠損マウスでは,減数分裂再開と第二減数分裂中期への進行が野生型マウスのそれらに比較して2時間早期に生じていた.さらに,第二減数分裂中期での停止能がERK1/2の脱リン酸化促進により低下し,排卵刺激20時間後には半数以上の卵が単為発生を開始していた. 体外受精については卵を回収する時間を変えることによって,および体内受精は交配時間を変化させ,減数分裂進行の異常と受精能との関係を追求した.その結果,回収時間の遅延に伴い体外受精における正常受精率が低下し,交配のタイミングを遅らせることで,産子数が低下した. この妊孕性を低下させる主要因となる減数分裂進行の異常と顆粒膜細胞のNRG1との関係について,NRG1の標的細胞である卵丘細胞に着眼し,詳細に検討した.Nrg1欠損マウスでは,Sp1やCREBにより発現上昇する遺伝子が野生型に比較して2倍以上高い発現を示し,その原因としてそれらの転写因子の上流に位置するPKAではなくPKC活性が欠損マウスで高値を示した.これは,NRG1によるCa2+流入抑制作用に起因すること,PKC活性の上昇はギャップジャンクション構成因子であるconnexin43のリン酸化を促進すること,それがギャップジャンクションの閉鎖を誘導する結果,減数分裂が早期に再開することも明らかとなった. 以上の結果から,排卵期に顆粒膜細胞で発現するNRG1が卵の受精能保持時間を決定するという新知見を得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Nrg1に着目し,その発現および機能の性差を解明する研究として,平成25年度は雌における機能の明らかとして,学術論文に掲載された.また,次年度に向けて,雄における機能を解析するために必要な予備検討も終えることができた.平成26年度に雄の解析を進めることで,全容解明ができると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,Nrg1flox/flox;Cyp19a1Cre雄マウスの解析を,精巣の間質における細胞種に着眼し,間質細胞の役割の専門家である九州大学諸橋教授の協力を得て,解析を行う計画である. さらに,間質細胞の分化が精子形成に及ぼす影響については,精子形成の専門家である基礎生物学研究所吉田教授の協力を得て,研究を遂行する. この共同研究により,精子形成に果たすライディッヒ細胞のNRG1の役割を解明する.
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