公募研究
本年度は,Nrg1flox/flox;Cyp19a1Creマウスを用いて,雌では排卵期の顆粒層細胞,雄ではライディッヒ細胞に発現するNRG1の機能解析を内分泌学的に実施した.その結果,雌においてはNRG1が黄体ホルモン(プロゲステロン)合成を持続的に高めること,これはプロゲステロン産生に関与する酵素群をコードする遺伝子発現を一過的なものでなく持続的にする作用であることが明らかとなった.この持続性はERK1/2-C/EBP系の持続的な活性化と密接にリンクし,一方でCa2+-PKCとは負の相関関係であることも明らかとなった.さらに,NRG1に立脚するプロゲステロン産生による正常な排卵誘導により,高い受精能を持った成熟卵が得られることも示された.一方,雄においてはNRG1によるライディッヒ細胞の増殖促進により,精巣間質におけるライディッヒ細胞と副腎様細胞の割合が決定され,NRG1が不足している,あるいは欠損している場合,副腎様細胞の割合が増加する結果,精巣局所におけるグルココルチコイド濃度が上昇することが明らかとなった.一方,正常個体ではNRG1に起因するライディッヒ細胞の増殖により充分量の男性ホルモン(テストステロン)が合成されていた.高グルココルチコイドは,精子形成過程の最終段階である尾部の伸長期に精子のDNAを不安定化させ,さらに異常な尾部形成となる結果,受精能力の極めて低い精子が造精される.この高グルココルチコイド環境をグルココルチコイド受容体拮抗剤投与により改善すると精子形成が正常化することも明らかとした.以上の結果から,雌雄ともにNRG1は組織(雌雄)特異的ステロイド産生に重要な役割を果たすことで,高い受精能力を持つ配偶子を形成させることが示された.
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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