研究領域 | 性差構築の分子基盤 |
研究課題/領域番号 |
25132711
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
田中 聡 熊本大学, 発生医学研究所, 助教 (10321944)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 性分化 / マウス / 胚発生 |
研究概要 |
哺乳動物の性は、性染色体XとYの組合せ(雄はXY、雌はXX)により、受精した卵の段階から遺伝学的に決定される。しかし、雌と雄の性差が初めて生じるのは、妊娠中期頃の胎仔の生殖腺原基である。この生殖腺原基において、Y染色体上の性決定遺伝子Sryが発現することにより、雄では精巣へと分化し、一方、Sryの発現がない雌では卵巣へと分化することにより、体全体が雄又は雌へと形作られる。しかし、性分化の開始点となる器官である生殖腺原基の形成及び、Sryの発現を制御する分子機構については、十分には明らかにされていない。我々は、ホメオドメインを持つ転写因子Six1とSix4が、生殖腺原基の前駆細胞形成とSryの発現を誘導する転写因子カスケードの制御を行っていることを見いだした。Six1或はSix4を単独で欠損させたマウス胚では変化がないが、この両方を欠損させたマウス胚では、雄雌ともに、小さな生殖腺が形成された。これは、Six1/Six4が、生殖巣体細胞の前駆細胞形成に重要な遺伝子Ad4BP(別名: Nr5a1/Sf1)の転写を活性化に働いていることに起因することを明らかにした。この変異マウス胚では、遺伝学的には雄(XY)にもかかわらず、生殖巣原基は精巣でなく卵巣へと性転換していた。これは、Six1/Six4が、生殖巣原基でのSryの発現を制御している遺伝子Fog2(別名: Zfpm2) の発現を、さらにその上流でその転写を活性化していることに起因することを明らかにした。以上のことから、Six1/Six4が、2つの独立した経路によって、生殖巣原基を作り出すこと(生殖腺の大きさの決定)と、雄になる最初の仕組み(性の決定)を制御していることを発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Six1/Six4が、細胞種を越えて前駆細胞形成を制御していることが推察される興味深い結果を得られているため。具体的には、Six1とSix4が、生殖腺原基の前駆細胞形成においては、前駆細胞に発現するAd4BPの転写制御により、生殖腺原基形成の制御を行っていた。最近の解析から、Six1とSix4は、生殖細胞形成においても、前駆細胞に発現する遺伝子の発現調節を行うことにより、その形成を制御している可能性を見いだしている。しかしながら、年度末に予想外に育児に時間をとられ、研究遂行に若干の遅延が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
Six1とSix4は、生殖細胞形成においても、前駆細胞に発現する遺伝子の発現調節を行うことにより、その形成を制御している可能性を見いだしていることから、その作用機序について研究を進めて行く。
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