研究実績の概要 |
申請者らは、様々な細胞系譜の前駆細胞集団の形成やその細胞数のプールサイズの調節に働くことが示唆されている転写因子(Sixファミリー)に着目し、生殖巣原基の前駆細胞の形成機構と性分化の制御機構の解明を進めた。Six1とSix4は、生殖腺の前駆細胞に特異的に発現するAd4BPの転写活性化を介してこの前駆細胞集団の形成を制御していた。また、Six1とSix4は、転写因子Fog2の発現制御を介して性決定遺伝子Sryの発現を制御しており、性染色体がXY型のSix1とSix4の欠損胚の生殖腺は、卵巣へと分化が進んでいた。このXY型のSix1とSix4の欠損胚に、Sryを外来性遺伝子として発現させると(Sry-トランスジェニックマウス; Kidokoro et al., Dev. Biol., 2005)、精細管形成を伴う生殖腺の雄性分化が進行した。興味深い事に、XX型のSix1とSix4の欠損胚では、外来性Sry発現により精巣分化が誘導されなかった。一方、XX型のSix1とSix4のヘテロ胚は、外来性Sry発現により精巣分化が誘導される。この外来性Sry発現により、精巣へと分化が誘導されるXY型のSix1とSix4の欠損胚と誘導されないXX型のSix1とSix4の欠損胚の差は、おそらくY染色体上のSry以外の性染色体の構成の違いが原因と考えられる。一方、後者の同じXX型で、外来性Sry発現により精巣への分化が誘導されるSix1とSix4のヘテロ胚と誘導されないSix1とSix4の欠損胚の差は、Six1とSix4の発現量の違いが原因と考えられる。そこで、これらの違いに着目して新たな性決定の制御に関わる分子機構を解明するため、これらの間でのトランスクリプトームの比較解析を行い、性分化制御に関わると考えられる幾つかの新規候補遺伝子を得ることに成功した。
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