研究領域 | 先端技術を駆使したHLA多型・進化・疾病に関する統合的研究 |
研究課題/領域番号 |
25133702
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
大橋 順 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80301141)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | HLA / 分子進化 / 自然選択 / 多型 / 組換え |
研究概要 |
タイの熱帯熱マラリア原虫32個体のTRAP遺伝子の配列解析を行い、当該遺伝子には正の多様化選択が作用していることを示した。 次に、32個体の変異スクリーニングにより検出された35個のTRAP遺伝子多型のうち、マイナーアリル頻度の高かった多型について、熱帯熱マラリアに感染したタイ人患者(計784名;軽症マラリア患者387名、非脳性重症マラリア患者281名、脳性マラリア患者116名)の熱帯熱マラリア原虫のゲノムDNAを解析した。Immune Epitope Database (IEDB, http://www.immuneepitope.org/) を利用し、ANN、SMM、ARBの3種類のアルゴリズムを用いて、クラスI分子認識抗原候補部位に存在し、アミノ酸置換により結合能の変化が期待されるTRAP遺伝子の非同義多型を選出した。候補となった非同義SNPとクラスI遺伝子多型との相互作用を遺伝統計学的に評価した。ここで、相互作用を検出するため、HLA遺伝子多型×原虫遺伝子多型のカイ2乗検定を使用した。相互作用解析を通して、感染しにくいHLAクラスI遺伝子とマラリア抗原の組合せを検出した。 HLA-DQ分子は、連鎖して存在するHLA-DQA1遺伝子とHLA-DQB1遺伝子にそれぞれコードされるアルファ鎖とベータ鎖からなるヘテロ二量体である。アルファ鎖とベータ鎖の全ての組合せでDQ分子を形成するわけではなく、DQ分子を形成しうるアルファ鎖とベータ鎖の組合せ、すなわち2つのハプロタイプリネージが共存している。そこで、1000ゲノムデータベースからヒト集団のDQ遺伝子間領域の多型データを取得し、DQ遺伝子間の連鎖不平衡の程度を評価したところ、一方のリネージでは組換えがほとんど起きていないことが確認された。現在、組換えの抑制が、当該リネージの機能的制約によるものか否かの検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マラリア原虫TRAP抗原遺伝子に作用した正の自然選択を検出するとともに、その多型解析が完了し、クラスI遺伝子多型との相互作用の検討まで完了したため。
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今後の研究の推進方策 |
タイ人デング熱患者871名を対象に、各個体のHLA遺伝子型とKIR遺伝子型との組合せ(機能するレセプターとリガンドの組合せが決まっている)と、デング熱重症化(デング出血熱やデングショックシンドローム)との遺伝疫学的関連を検討する。 DQ遺伝子間領域(特に、DQA1とDQB1との間の12kb)の配列解析を行い、DQ遺伝子進化プロセスと、自然選択がその多様性形成・維持に与えている影響を解明す。
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